62話 対策会議2
「……よし、こんなもんか」
エドワードは決めると、カロージェロ、ジーナ、ベッファを呼んで禁止区域を作ることを話す。
カロージェロは間取り図を見ながら思案しつつ、
「……裏門付近も立ち入らせないようにした方が良いでしょう。シルヴィア様の許可がなければ門は開きませんし跳ね橋も下りませんが、逆に言うなら許可があれば通じてしまいます。何か不測の事態が起きて裏門が通じ、侯爵令嬢が公爵領に逃げ込んで行方不明になった場合、公爵家の責任問題になってきますから」
と、見解を述べた。
「……確かにそうか。じゃあ、裏門は禁止だ」
あそこはエドワードが鍛錬で使うか情報を取りに公爵領の町へ繰り出すか以外、誰も訪れない。城下町とは逆側で日当たりも悪く、行く必要性がないからだ。
逆に言うなら、必要性がない場所だから禁止区域に指定していなかったのだが、よく考えれば公爵領へ直結する道だったと思った。
「侍女の方はいろいろ動くと思いますので、使用人が立ち入る区域は全部行けるようにしてほしいです。こちらでもカバーしますが、侯爵令嬢の方がどのような要望を出し、侍女の方がどのように動くのかわからないので……」
ジーナは正直不安だった。
シルヴィアは貴族だが、かなりイレギュラーだとわかっている。
そして、ジーナは公爵家の服を仕立てていたが、貴族と直接話したことはない。下請けなので、取り引き自体は服飾店がやっていた。ジーナは言われたとおりの服を作るだけ。
そもそも忙しすぎてあまり外に出たこともないのだ。会話やマナーを勉強しているが、貴族に対して不敬なことをしないかと考えていた。
新しく来た上級使用人のどちらかが侯爵令嬢の侍女につくだろうが、だからといって人手が足りなければジーナだってやることになるだろう。それに、そもそも侍女の教育もお願いしていたのだから、もしかしたら侯爵令嬢とともにやってくる侍女はそのつもりかもしれない。
そうなった場合、『立ち入り禁止区域のため行けない』となると、困ることが起きるかもしれない。
いろいろと考えてしまって不安になりながら意見を言うジーナに向かって、エドワードとカロージェロがうなずく。
ジーナの心情を察したカロージェロがベッファを見た。
「ベッファ、侯爵令嬢がいらっしゃったら貴方がこちらの侍女たちのカバーに入ってください。オノフリオ侯爵家使用人として鍛えられた才腕に期待していますよ」
カロージェロがニッコリと笑顔で言う。
ベッファは一礼した。
「かしこまりました。両親の教育により理不尽は慣れております故、侯爵令嬢をうまくあしらいましょう」
エドワードが付け加えた。
「ついでにシルヴィア様のカバーも頼む。シルヴィア様は、あまり貴族の付き合いはしてこなかったんだ。……というか、あの歳でここの城主だからな。唐突に突拍子もないことをしでかす可能性がある。侯爵令嬢が怒り出す前にフォローしてくれ」
「お任せください! 侯爵令嬢がわが主に無礼を働きましたら即刻処分いたします!」
「するな! 俺の話を聞いてたのかよ!?」
先ほどの有能な使用人然とした振る舞いから一転、目をキラキラさせ前のめりで食い気味にとんでもない返事をしたので、とたんにエドワードは不安になった。
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