ナマクビと食事
ようよう。あんた、坊さんかい?
って、なんだよ。目を丸くしてキョロキョロしちゃってさ。こっちだよ、こっち。
お前さんの後ろの岩の上だよ。
あっはは。びっくりしたかい?
まあ、生首が岩の上から話しかけてきたら驚くわな。
俺が生きていた頃なら、ひっくり返っていたかもしれねぇ。
物の怪かだって?おいおい、そんなわけ無いだろう。とは、言い切れなかったな。
これでも人さ。元だけどな。
って、おいおい。「そうか」の一言だけって興味無さすぎないか?
普通、「祓ってやる」とか、もっとこう、なんかあるだろ。
祓ってほしいのかだって?
いや、そうは言わねぇけどさ。
って、それは握り飯かい?そうか、もう昼飯の時間か。
こんな姿になって、もう何年食って無いだろうなあ。
食えないのかだって?
首から下が無いのに食べられるわけ無いだろう?
まあ、元々は食いしん坊だったからな。食べたくはあるけどよぉ。
なぜ生首に?ああ、それはな。仏様へのお供え物を腹減って食ってしまったら、天罰で。
自業自得?そう言うなって。誰だって腹減ってたら食べるだろ?
まあ、そのせいで空く腹も無くなってしまったがな。ははは。
って、今の話聞いて普通に飯を食うんだな。いや、まあ。確かにお前の勝手だがよぉ。
ってなんだよ。おもむろに紙なんて取り出して。
米って一筆書いてやるって、止してくれ。文字の米で腹がふくれるかよ。
そうとも限らない?
っておいおい、俺の意見は無視かよ。痛!力いっぱい張り付けるなって。
……あ、なんだか米を食べている気分になってきた。不思議だなぁ。
……なぁ。坊さんよぉ。俺な、今まで腹いっぱい米なんて食べたこと無いんだ。
まあ、この世に生きていて、腹いっぱい食えるなんてありえないけどよぉ。
一度でいいから、コメをたらふく。腹いっぱい食べたかったんだ。
まあ、そんな願いも叶わず、生首だけになっちまったけど……
腹が減ったから、食べた。それがこんなことになるくらい悪かったのかねぇ。
「知らん」って、ひでぇ坊さんだ。
……まあ、最後に。腹いっぱい米食べた気分になれたなら、それはそれでよかったのかもなぁ。
あぁ、分かっているよ。生首がこの道の岩の上にいちゃ、気味悪くて通れねぇんだろ?
ま、腹いっぱい飯食べた気分になったし、成仏してやるよ。
あー、あっちの世界では、たらふく食べたいねぇ……
気分じゃなく、さ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます