第26話
人間はきっと、かなり脆い。
自分が傷ついている事に気付いても、大丈夫、まだ大丈夫だと必死に言い聞かせる。
自分の限界も分からないから、立ち止まることが悪だと思ってしまうから、転んでも擦りむいても捻っても歩き続ける。
自分を守る為に他の何かを傷つける。感情を制御する術が分からずに、大切なものを見失ってしまう。言い訳をして、嘘をついて、自分が何を守りたかったのかさえも分からなくなってしまうのだ。自分の事は自分が一番分かっている。だからこそ一番向き合わないといけないのは自分だ。
「また悲しいニュースが入ってきました。先月、いじめが発覚した中学校の屋上から、女子生徒が飛び降り〜〜」
流れてくるニュースを聞きながら、部屋のカーテンを開けた。
脆くて弱くてちっぽけな俺たちは、でもきっとそのままでいいのだ。強くなろうとしなくていいのだ。傷つけられて、傷つけて、救って、救われて、そんな事を繰り返す。繰り返して生きていく。全てが何かの理由になって、誰かの生きる意味になる。少しだけ、優しくなれる。強くなろうとしなくていいから、自分の心に触れてあげたい。泣きそうな自分を、大声で泣かせてあげたい。泣いてる自分の、涙を拭ってあげたい。泣き疲れて眠る自分を、抱きしめてあげたい。そんな自分を、愛してあげたい。
ゆっくりと息を吐き出して、窓越しに雲ひとつない空を見上げる。
視界いっぱいに広がる世界は、
あの日見た海のように青くて、美しかった。
そばにあを なつめのり @natsu_haru
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