第25話 一万と二十三歳

「柚香さん!『大丈夫!私が守ってあげるからねっ?』って言ってたのは何処へ行ってしまったんですかっ?」


「テヘっ?信じてたんだからね?じゃ、私も直ぐに行くから、桃華さん案内お願いねっ!」


………………………………………『テヘっ』じゃ無いでしょっ。引き止める間もなく、行ってしまった柚香さん。


柚香さんの、実家。

柚香さんの運転で、訪れたけど…………

ビビるほど、広いしっ!

白壁に囲まれた立派な門扉をくぐり抜け、暫く走らないとたどり着けない、車止め。

すぐ近くの車庫には、高級車が何台も止まってるしっ。

この街にこんなお屋敷が有ったなんて、知らなかったよ。

執事風の黒服な銀髪女性に助手席ドアを開けられて、そのまま有無を言わせずに連れ込まれたのが先程の道場での出来事。


「涼様、お見事でした。直ぐに食事をご用意致しますので、暫しこちらでお待ち下さい。」


渡り廊下のような通路を、桃華さんの先導で歩き続けて案内された部屋の中で。


「………………………………………『お見事』じゃぁ無いでしょっ?あれは酷いですよっ!ところで、貴方様は?」


「失礼しました。自己紹介がまだでしたね。執事を仰せつかっております桃華と申します。以後お見知り置きを。」


「………………………………………桃華さん、お若く見えますけどおいくつですか?」


「女性に年齢を尋ねるのは、マナーに反しますのよ?」


「っ、失礼しました、そうですよね。お若く見えたので、つい?」


「あら、お上手ですね。いいですよ、お教えしましょう。一万と二十三歳です。」


「……………………………………………エルフですかっ?」


「よくわかりましたね?正解です。ほら、この耳が証拠です、」


セミロングの銀髪を掻き上げると、少し尖ったお耳が!


「……………………………………………マヂですかっ!」


「冗談です。」


「何処まで本気なんですかっ!」


「全部本気の冗談ですが?年齢はホントですよ。私はハーフエルフです。はい着きました。こちらでお待ち下さい。」


何処までがホントなのか冗談なのか?わからなくなってきたし。

脱力しながら促されたソファーに掛けて、ガラステーブルに置かれたグラスを一気に飲み干した。


「涼様、一気にいきましたけど大丈夫ですか?」


少し慌てた様子の桃華さん。


チョット、待ってよっ、何か入ってたの?

ただのお水だよね!


「………………………………………うわっ、なんだか身体が熱くなってきたような?」


「おかしいですね?そんなに早く効いてくるなんて。」


「何を入れたんですかっ!」


「これも本気の冗談です。ただのミネラルウォーターです。少しだけ私の愛情が入っておりますが。」


本気で『本気の冗談』は止めてほしいっ!

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