第20話 太っ腹?
「『金咲羅』さんと『金園羅』さんですね?」
あの忌々しい弁護士事務からの帰り道。
黒服の男十数人の集団の中の一人に声を掛けられた。
「………………………………誰のことかしら?」
今、その『名前』を知られるのは不味いのよね。
早く次の『名前』を用意しないといけないのにねっ!
こんな所で時間を取られたくないのに。
「とぼけるなら、これを持ってそこの交番まで行くがよろしいかな?」
………………………………良くないわね。
彼の手には、私達の指名手配書。
その交番の掲示板には、私達のその指名手配書が貼られてるから。
どうやって逃れようかしら。
娘と目を合わせて、頷いたので、
「どうすれば開放してくれるのかな、お金かしら?」
「わかってくれて、助かる。我々は手荒な事はしたくなかったのでな。我々はだけどな。そこの車に乗ってもらう。少し、話を聞きたいだけだ。」
すぐ近くの全面ガラスにスモークフィルムを貼られた大型バンを指し示され、後部ドアを開けられて促されたので仕方なく娘と乗り込んだ。
※※※※※※※※※※
「では、報告を始めさせていただきます。」
梶山さんの弁護士事務所。
僕と柚香さんと、父。
事務の方かな?女性が一人。
その方が、何枚かのプリントを配り始めた。
「順番が逆になりましたが、お父様には依頼書にサインをいただきます。条件は昨日お話した通りです。確認の上、サイン願います。」
しばらく書類を読み込んでいた父は、サインをして事務員さんに渡した。
「ありがとうございます。こちらが、離婚届出の控えと養子縁組解消届出の控えです。それでは、回収した物をお渡ししますのでご確認を。」
大きめのバッグを渡された父が、封印を破って開けてテーブルに並べ始めた。
現金、五千万くらいかな?
あの金とプラチナのネックレスはどちらも父がしていたのを見たことがあるな。宝石の指輪は全部、父が母に贈ったものだね。
他にも、金貨やアクセサリーが多数。
ヤッパリ、あの母娘はパクっていたんだな。
よく、素直に返したな。
「………………………………ありがとうございます。成功報酬は、この場で現金でもお支払い出来ますがいかがしますか?」
「現金での回収分は今お支払い願えれば。着手金もお願いします。貴金属分は査定が難しいので、金とプラチナネックレスの地金の評価の三割だけでよろしければ。」
現金の三割で約千五百。金とプラチナは確かそれぞれ百グラム以上あったはず。
「では、依頼料別で千六百万円でいかがでしょうか?」
あれ?我が父にしては、太っ腹だな。
雪でも降らなければ良いけどな。
「その条件でお願いします。それと、サービスでもう一つあります。」
梶山さんが、何やら黒い笑顔で話し始めた。
「あの母娘から、慰謝料を回収する予定です。必要経費を除いて、全額を涼さんにお渡ししたいのですが。お父様、よろしいてすか?」
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