第9話 打ち合わせ

結局、柚香さんは、下着無しで僕のスゥエット上下を着てからコートを羽織って、表通りにあるファストファッションの店まで歩いて着替え一式を買いに行くことにした。


雨はもう上がっていて、ブカブカのコートの裾を半ば引きずるようにしながらの、買い物だった。

まあ、目立つ事この上ないけど、正しく背に腹は代えられない?

状況的に、さっきの大雨で濡れて着替えを買いに来たんだろうなと思ってもらえそうだよね。

まあ、欲望に負けて濡れたままの服を放置してしまったのがいけないんだけどね。


「んふっ、このスゥエット、涼君の匂いがいっぱいするね!嬉しいなっ?」


………………………………恥ずかしい事言ってないで、早く買い物済ませましょう!

昨夜寝巻き代わりに着ていたやつですから。何か匂うんですか?

えっ、僕が選ぶんですか?

ワンピースとシャツなら、ワンピースで。

色ですか?そこのグリーンので。

えっ、下着はどれがいいかって?

ただでさえ目立ってるんですから、早く終わらせて!

あっ、そのピンクの可愛いブラとショーツのセットなんかどうで…

いえ、何でもないです!

………………えっ、買ってくれるんですか?


グタグタになりながらも素早く買い物して、部屋へ戻って着替え始める柚香さん。

なんとなく動きがぎこちないのは、さっき途中から激しく動いたからだろうか。

それとも、僕が選んだ下着だからかな?

着ていたスゥエットを脱ぐ時よりも下着を履くときのほうがエロく感じるのは、気のせいではないよね?


「涼君が選んでくれた下着だ〜、嬉しいな〜っ?次は涼君に脱がして貰うんだ〜」


なんか、物騒な鼻歌が聞こえてきてるんですけど?


着替え終わって落ち着いた所で、コンビニで買ったパンをかじりながら話の続きを。


「涼君、あなたのお父様と継母にはあなたを扶養する義務があります。その義務を放棄するのは犯罪なのよ。」


急に真面目な表情に変わった柚香さん。

どつちが本当の柚香さんなんでしょうか?


「ん〜、扶養って言っても、ピンとこないんだけど?」


勿論、解って言ってるんだけどね。

父にわざと『放置』されてるのは、縁を切りたいからだしね。

追い出された日に殴られたのも、そうなるだろうと計算の上だったからね。ちゃんと診断書も取ってあるしね。


柚香さんのスマホが震えて通知画面が光っているのを確認して、


「この話の続きは車の中でしましょうか、お迎えが来たようね。」


「えっ、お迎え?」


「そう、お迎え。私の祖父の、顧問弁護士よ。涼君の依頼でっていうことで打ち合わせするから、話しを合わせてね?」

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