第8話 緊急の用件
「柚香さん、ホントに初めてだったんですね?」
あっという間に彼女の中で果ててしまった僕は、照れ隠しの延長のような気恥ずかしさを隠すために落ち着いた口調で、尋ねた。
「え〜、疑ってたのかな?プンプン!痛かったんだからね?」
一度身体を離してから、体勢を入れ替えて僕の上に跨ってゆっくりと腰を回すように振りながら、彼女は答えた。
「柚香さん、大丈夫なんですか?」
「ん、何がかな?」
「そんなに腰振って、もう痛くないんですが?それに、避妊してませんから。」
「ん〜、まだチョットだけ痛いけどね。一応大丈夫な日だけど、アフターピルもらってあるから心配しないでいいよ。」
「そうなんですね。では遠慮なく続けます。でも、初めてが僕で良かったんですか?」
「涼君が良かったの!ずぅ〜っと待ってたんだからね、涼君とお話出来る機会を。」
…………………………………………
「ねえ、何でガス使えないのかな?シャワー位は使えるようにしておいて欲しいな。」
お互いの身体中の汗と体液と、初めて僕を受け入れた証をカセットコンロで沸かしたお湯でタオルを濡らして拭いながら、尋ねられた。
「ん〜、公共料金支払えなくて止められてしまってね。一人暮らし始める時に生活費は貰える約束だったんだけど、振り込まれてこないんだよね。」
「え〜!それって、おかしいよね!ここの家賃だって高そうじゃない!」
「それが、ここは母から相続して僕の持ち物なんだ。」
「いや、ますますおかしいわよっ!ここを相続するくらいなら、資産は有るでしょ?」
柚香さん?裸で迫られると、恥ずかしいんですけど!って、脱いだ服は、濡れたままだったね。どうしようか?
「相続の時に、弁護士管理になっててね。二十歳になるまでは僕の自由にはならないんだよね。」
「………………………………じゃ、どうやって生活してたのよ!」
「成績下がると退学だと脅されてたから、単発のバイトしか出来なくて。来週から電気も止められる予定になってるんだよね。長期のバイトは、保証人必要だから中々出来ないし。」
「………………………………誰に脅されたのよ?」
「継母だよ。」
「………………………………お父様と、話させてくれるかな。すぐに電話繋げるかな?」
「二度と連絡するなと言われてるんだよね。」
「繋いでくれるだけていいから。最初から私が話すわよ。さあ、早く!」
迫力に負けて、スマホの電話帳から父の番号を呼び出して、タップしてスピーカーに切り替えてから柚香さんに手渡した。
コール10回目で繋がって、
『………………………………涼か?二度と連絡するなと言ったはずだが?』
「緊急で連絡させて頂いておりますので用件のみでお伝えします。涼君の事で、確認したい事が有ります。」
『………………………………誰かね、君は。答える必要を認めない。切らせて貰うぞ。』
「お答え頂けなかったり、通話を切られた場合には弁護士から問い合わせさせていただきます。」
『………………………………今、仕事中だ。後にしてくれ。』
「緊急と伝えました。拒否されたと判断させていただきます。弁護士と共にこれから警察へ相談に行きます。」
『………………………………わかった、後で聞こう。一時間で仕事を終わらせる。それでいいか?』
「今聞いて頂けないのなら、お会いして話すのを条件にさせてもらいます。場所は指定させてもらいます。キッカリ一時間後に連絡します。よろしいですね?」
柚香さんの迫力のある話し方に気圧されながら聞いていたけど、どうするんだろうと思っていたら何処かと連絡を取り始めた。
何かを調べるように伝えたみたいだけど、何をするんだろう。
命令口調で三十分以内に返事をとか言ってたけど、誰と話してるんだろうか。
そういえば、二人共まだ裸だった。
柚香さんの着替え、どうしようかな。
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