第6話 侵入未遂

管理人さんは常駐しているので理由を話して何とか荷物搬入許可をもらい、最上階の角部屋なので真下と隣の部屋に挨拶をしてから荷物を運び込んだ。


「よしっ、あと何かして欲しい事は有るか?」


兼兄さんに問われたので、


「シリンダー錠を交換したいですね。あと、入口前に防犯カメラを付けたいです。」


呆れた表情になった兼兄さんと智。


「……………………そこまで、酷いのか、あの二人は?」


黙って頷くと、


「わかった、待ってろ!」


車から小さなバッグを取ってきた兼兄さんは、シリンダー錠と補助錠を取り外して一旦バラしてから鍵束から一組のキーを取り出して合わせてから組み直して取り付けた。

更に、天井の隅な、見上げても簡単には見つからない所に小さなカメラを貼り付けた。


「鍵は中身を組み替えたからこれで、カメラはこのまま2週間は連続撮影出来るぞ。で、何かされると思ってるって事だよな?」


「ええ、多分だけど、今夜にでも。」


「あ〜、わかった、駅前の交番に知り合いがいるから話を通しておくから、何かあったら110番ではなくこの番号へ掛けろよ。ドアノブをいじると知らせるセンサーを付けておこうか。」



※※※※※※※※※※



深夜2時過ぎ。


センサーが反応した小さな電子音。

迷わず登録した交番の番号をプッシュ。

玄関前に不審者がいると、マンション名と部屋番号を伝える。


一分もしないうちに、玄関前で口論の後の格闘音。

近くに控えていたのかな?

しばらくすると、パトカーのサイレン音と共に騒がしくなる廊下。


『2時15分、逮捕…………』


警察官と思われる、叫び声。


騒ぎが収まったかと思う間もなく、ドアチャイムを鳴らされて、


「夜分すみません、警察です。不法侵入者を捕まえたので、差し支えなければ事情をお聞きしたいのですが。」


ドアチェーンを掛けたまま開けると、4名の制服警官と取り押さえられた二人のマスク男。


同じフロアの住人達が、玄関を開けて恐る恐るこちらを伺っている。

スマホカメラを向けてる人もいるな。


「事情でしたら、カメラに映ってるかと?」


天井を指差し、


「外しますか?」


「いえ、良ければ我々が取り外します。証拠品になりますので。」


踏み台を用意してあげると、手早く取り外されてから、


「これから署まで同行願えますか?」


あ〜、これは拒否出来ないやつだな〜と思いながら頷いて、


「カメラ、付けるので待ってもらえますか?」


新しいカメラを差し出しながら、何か事情を察したのか渋い顔をする警察官に笑いかけたらドン引きされてしまった。


兼兄さんに、これから署まで連行されますとショートメール入れたら、すかさず、『頑張れ』と返信されてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る