第35話 菜園の近くに薬草が?
ライトがぐっすりと眠っているため、邪魔をしないよう私とキールは五階の庭エリアへと向かった。
ちなみに初めて上層階へ行ったあの日以降、エレベーターは五階でしか止まらなくなり、それ以外の階へは行けない仕様になっている。
念には念をと思ったライトが魔法でいじったのだろう。
「――ねえ、見て見て! 芽、だいぶ伸びてきてる!」
「おお、やっと出てきたのか。けっこう時間かかるんだな」
「どれだけ早く育つと思ってたのよ……」
今、植えてから一週間くらいよね。順調に育ってて何よりだわ。
体力が回復したら、ライトにも見せてあげよう。
「――にしても、なんか庭にいろいろ生えてきたわね」
「ここ一週間、ライトがいなかったからな。……あれ、でもこれって」
キールは菜園の近くに生えている雑草に近づき、まじまじと見ている。
どうしたんだろう? もしかして食べられる草とか?
「これ、薬草じゃないか? しかも割と効能高めのやつ」
「そうなの? それならライトが植えたのかもしれないし、放っておきましょうか。キールは薬草に詳しいの?」
「いや、べつにそういうわけじゃないけど。でもキルスの家に本がたくさんあるから、借りて読むことがあって……」
キールは読書や観察が好きらしく、読める環境があれば割と読む方だと教えてくれた。好奇心旺盛そうだもんね!
「へえ、いいわね。薬草かあ。ちょっと興味あるかも!」
「でもヒマリは薬草の何倍もすごい回復料理作れるから、必要なくね?」
「キールは回復魔法は使えないの?」
「うーん。すごく弱いやつなら使えるけど、大抵は結構な重傷を負わされるから治しきれないし、魔法を使うことで体力消耗するから治りが遅くなって結局あんまり意味ないんだよな……」
な、なるほど……。
そっか、ライトは当たり前のように魔法を使うけど、それは膨大な魔力を持ってるからなせる業なのね。
「回復魔法も、召喚や転移ほどじゃないけど比較的ハイレベルな魔法なんだよ。簡単なのは、火魔法とか水魔法みたいなシンプルに自然を操るやつ。もちろん、強力な魔法を扱うには相応の魔力がいるけどな」
「魔法も簡単じゃないのね」
「ヒマリの回復料理は、結構チートな部類だと思うぞ。回復薬は効果の程度関係なく総じて苦いしおいしくないけど、ヒマリのはおいしく食べられてしかも意味分からないくらい効果も高いからな……」
まあ、ライトもびっくりしてたもんね。
私自身まったくもって仕組みが分かってないけど、私も作った料理に回復効果が付与されるなんて本当チートだと思うわ。
でもハーブとかスパイスとか好きだったし、薬草は薬草でやっぱり気になる!
こっちの薬草も、もしかしたらそういう使い方ができるかもしれないしね。
ライトのプライベートエリアにあった、あの本棚にはないのかなあ?
私とキールは雑草と思われる草だけ抜いて、水やりをして、それから休憩がてら庭に座ってのんびり菜園を眺めながらぼんやり過ごした。
――それにしてもここ、気温も風も心地よくて本当に外みたい。
日向ぼっこに……最適……す……ぎ……。
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