第29話 ステーキ豆、いざ実食!
「今日はオーソドックスに、鞘から出して焼くことにしよう」
「はーい!」
「まずは包丁で鞘を切って豆を出して、油をひいたフライパンで表面をこんがり焼く」
ライトは包丁で鞘に切れ目を入れて、そこから開いて豆を取り出す。
豆は一粒で小さいものでも十センチ、大きいと十五センチ近くある。
「見た目は空豆に近いのね」
「ああ、うん。確かに味や食感も近いものがあるかも。ステーキ豆の方が若干甘みがあるし、ほくほく感も強いけど」
「へえ、おいしそう!」
両面を軽く焦げ目がつく程度に焼いたら、蓋をして蒸し焼きに。
火を弱めてじっくりと火を入れるのがコツだと教えてくれた。
「――そろそろかな」
ライトがフライパンの蓋を取ると、蒸気とともに豆のほのかな青臭さと甘さの入り混じる香りが立ち上った。
ぷっくりとした巨大な豆に、たまらなく興味をそそられる。早く食べてみたい!
「あとは軽く味つけをして完成だよ。今回はそうだな――バターとにんにく、塩コショウあたりでいこうかな」
ライトはバターとみじん切りにしたにんにくを加えて全体に絡め、塩とコショウを振って「こんなもんかな」とか何とか言いながらフライパンを揺すって様子を見る。
やっぱりこの子、相当料理慣れてるわね。
十歳とは思えない手際のよさだわ。
「もうできるからキール呼んできて」
「はーい! ――あ、スープ少し冷めてるかもしれないから、温めてくれる?」
「了解!」
キールを呼びに行って戻ってくると、ほとんど盛り付けが完了していた。
いつの間にか、にんじんのグラッセと炒められたクレソンも添えられている。
「早いわね!? いつの間に!」
「え? ああ、魔法と魔力レンジを使えばあっという間だからね。あとは豆焼くのに使ったフライパンでさっと炒めただけ」
「うおお、すごいご馳走! え、これオレも食べていいやつ?」
「うん。今日はちゃんと働いてくれたみたいだからね」
みんなでダイニングルームへと運び、席に着く。
ふふっ。人数が増えるとイベント感があっていいわね。
って言っても三人だけど。でも楽しい。
「――それじゃあ、いただきます」
「いただきまーす♪」
「い、いただきます……」
キールはまだ慣れないようで、若干ためらいながらではあったが。
それでも一緒に手を合わせてくれた。
――こ、これがステーキ豆!
ナイフとフォークを使って切り分けると、香ばしさとにんにくの香りを孕んだ蒸気が昇って鼻腔を刺激する。
見た目は本当に大きな空豆って感じね。
でもライトがホクホク感が強めって言ってただけあって、若干じゃがいもっぽさも感じるかも?
そんなことを考えながら、ドキドキしつつ口へと含むと――。
「!? すごい、本当にすごくホクホクしてる! 豆の味はちゃんと濃いのに、変なクセがまったくなくて思った以上においしいわ」
「おいしいよね。気に入ってくれてよかった。ヒマリが作ってくれたスープもおいしいよ。根菜と鶏の出汁のバランスがとてもいい」
「うん、スープうまい! ステーキ豆はオレも初めて食べたけど、さすが高級食材だな! 贅沢な味がする!」
え、ステーキ豆って高級食材だったの!?
そういえば、値段見てなかったわ……。
「キールも初めて食べたの? ち、ちなみにこれ、おいくら?」
「初めてだよ。上級向けの店にしか売ってないしな。値段の詳細は知らないけど」
「いくらだったかな……。多分、一鞘で1000フェルくらいかな?」
え、ええと……。
たしか1フェルが10円くらいって書いてたわよね。
つまりこれ、一鞘で10000円ってこと!? 確かにお高い!
「なんか軽率に食べたいとか言ってごめん……」
「べつにいいよ。オレはよく買うし。これ、栄養価も高いんだよね」
「くっ――この金持ちの最上級魔族め!」
「あはは、おまえと比較されても全然誇れない」
「どうせオレは最底辺だよっ!」
こうやって普通にしてると、本当に仲良さそうなのよねこの二人!
ずっとこういう感じだと助かるんだけどなあ。
――でも今日は、家のことも二人のこともかなり知れた気がするわ。
焦っても仕方ないし、一歩ずつよね!
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