第六章 園芸スペースで野菜づくり
第27話 やっぱりダメだったんじゃない!
「――で、おまえら何やってんの? オレ、ヒマリに上層階のこと伝えたっけ?」
エレベーターで三階へ降りると、扉の先にはライトが立っていた。
何だろう、何ともいえない圧を感じる……。
「あ……いや……これは違――っ!」
「ら、ライト帰ってたのね。おかえりなさい……?」
「ただいま。――で、何してたの?」
「カーテンの洗濯をしようと思って……。あとは、合間にお昼ごはんを食べたけど」
しばらくの間、お互い無言のまま何ともいえない空気が流れる。
そんな圧をかけてこなくてもいいじゃない!?
「……たしかに、ヒマリにはオレの部屋と地下室以外なら自由にしていいって言ったけど。でもこの扉、隠してあるって分からない? まあ完全に施錠してなかったオレも悪いけど!」
ほらああああああああ!
やっぱりダメだったんじゃない! キールの馬鹿っ!
「ご、ごめんね? でもこれは――」
「何か弁解したいことは? ヒマリに開けられるわけないし、おまえだよね?」
「…………ごめんなさい。ヒマリなら問題ないかなと思って」
ライトは、冷たい目で真っ直ぐキールを睨みつける。
……これは、もしかしなくても怒ってる!? ど、どうしよう?
というか、いつの間に鞭なんて! どっから出したのよ!
「ま、待って! お願いだからひどいことしないで。本当に、ただカーテンを洗おうと思っただけなのよ。ライト忙しそうだから、少しでも役に立ちたくて」
「…………だけ?」
「……い、いや、結果的にはお庭でお昼ごはん食べたいけど」
「本当、ヒマリも大概いい度胸してるよね! ――ったく。まあ今回はオレにも落ち度があるし、入るなって明言してたわけじゃないし、カーテン洗ってくれたことに免じて許してやるよ」
ライトは呆れつつも、鞭をしまってくれた。
なるほど、転移魔法で出し入れ自由ってことなのね。実質アイテムボックス!
なんにせよ、許してくれてよかった……。
「――そういえば、五階の庭の隅に小さな園芸用のスペースがあったんだけど、あれって使わないの?」
「え? ああ、今はちょっとそれどころじゃ――。当分は使わないかな」
「それなら、私が使ってもいい?」
「……今それをオレに言う勇気があるの、多分ヒマリだけだよ。まあいいけど。でも、五階以外へは勝手に立ち入らないこと! 次行ったらヒマリでも怒るよ」
――う。相変わらず圧がすごい。
まあでもたしかに、プライベートな場所に勝手に立ち入られたら普通は嫌よね。
悪いことしちゃったな……。
「分かったわ。今日はごめんなさい」
「もういいよ。キールも、五階なら許す。――あ、そうだ。ついでに庭の手入れもしてくれると助かる」
「お、おう。分かった」
「――ん。片づけまだ途中だよね? 終わりそう?」
「それは大丈夫。あと少しで終わるわ」
「なら任せるよ。オレは三階の自室にいるから、何かあったら呼んで」
ライトはそう言って、三階の自室へ向かった。
「……怒られちゃったね」
「ごめん。てっきり入っていいもんだと思ってて」
「ううん、おかげでこの家のこともライトのこともたくさん知れたし、ピクニックも楽しかったし。でもやっぱり、勝手に入ったのはよくなかったと思うわ。次からは許可を得てからかな」
特にライトは、多分自分の時間をとても大切にするタイプだと思うし。
立場上のこともあって、きっと誰かがいると気が休まらないんだろうな……。
「はは、そうだな。じゃなきゃ今度こそ泣くことになりそう」
「そうね。ピクニックにカーテン使わなくて正解だったかも。――さて、今日中に終わらせたいし、続きをするわよ!」
「おう!」
その後も私とキールは、カーテンを洗濯してはつけ直し、掃除を進めていった。
――今日の晩ごはんは何にしようかな?
たくさん働いたし、ハンバーグとかいいかも!
ああでも、昨日買ってもらったステーキ豆が気になりすぎるわ!
ライトに聞いて、あれを調理してみようっと。
でもお肉も食べたいわね……。つみれにしてスープにでも入れるかな。
洗濯機と乾燥機の優秀さも相まって、薄暗くなるころにはすべてのカーテンを綺麗になった状態で窓へと戻し終えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます