第24話 四階の書庫と部屋とライトのこと
四階へ降りると、図書館かと思うくらいに広く充実している書庫があった。
どの棚もしっかりと整理されていて、ぎっしり本が詰まっている。
「難しそうな本ばっかり。何の本なんだろう?」
「うーん、魔法書と歴史書がほとんどじゃないかな。あとは経営関連とか、ロードとしての在り方の本とか、数学とか語学とか……なんかいろいろあるよ」
「勉強熱心なのね……」
あの年齢で堂々と上に立つ役割を果たせるのは、こうして日々努力を積み重ねてるからなのかな。本当に、圧倒されるわ。
魔神ってみんなこうなの? そりゃあ誰も逆らえないわけだわ。
「……ライトは間違いなく魔神一族の実子だけど、幼少期に何も知らされないまま親に捨てられて、そこから死に物狂いで成り上がった実力派のロードでもあるからな」
「え――?」
「あいつサヴァント上がりなんだよ。最初は気の弱そうな奴が入ってきたなと思ってたけど、あるときから別人みたいに仕事をこなすようになってさ。そこからは驚異的な速さでロードに上り詰めた」
キールとライトは、元々同じロードの配下にいたサヴァント同士だったらしい。
ライトは暗殺も虐殺も、どんな仕事も顔色一つ変えずに遂行し、最終的には魔界で一番冷酷で悪名高い悪魔と恐れられていたという。
「――本当に、すごいよライトは」
キールはそう言って苦しそうに笑った。
暗殺とか虐殺とか、だいぶ聞き捨てならないワードが聞こえてきた気がするけど。
でもそれを責めるべきじゃないんだろうな、きっと。
この子たちはそういう環境に置かれて、命がけで生き残ってきたんだ……。
「……そっか。いろいろと話してくれてありがとう」
「はは、まあ話してよかったのか知らないけどな! ――ちなみにこの階は、書庫以外は立ち入り禁止だよ。奥の部屋はライトのプライベートな部屋だから」
「ライトの部屋、あっちこっちにあるのね」
「まあライトの家だからな。三階の自室は誰かが入ってくる可能性を踏まえて作られた執務室で、六階は基本的にはライトしか入れない執務室。で、この扉の先は完全なプライベート用の部屋」
つまり六階の執務室へ入れてもらえるキールは、それだけ信用されてるのね。
あれだけいろいろやらかしてて信用を得られてるのはすごいわね。
やっぱり、良くも悪くも裏表がないから?
ライトくらい地位と実力があれば、すり寄ってくる変な魔族も多いだろうし。
「――ふふっ」
「え、なんだよ急に……」
「何だかんだで意外といいコンビなのね、ライトとキール」
「はあ? どこをどう勘違いしたらそうなるんだよ……」
こいつ全然分かってないな、みたいな視線を向けてくるキールのことが、そしてそんなキールをどう考えても大事にしているライトのことが、なんだかたまらなく可愛く愛おしく思えてしまった。
まあ、暴力沙汰は勘弁してほしいけど!
「ねえキール、五階のあの園芸スペース、使えるか聞いてみようか。もしいいって言ったら、一緒に野菜を作らない?」
「お、おう。べつにいいけど、オレ本当おまえの思考回路が分かんないわ……」
頭に「?」を浮かべ困惑しているキールを見て、私はまた一つ、ここでやっていく新たな楽しみを見つけた気がした。
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