第23話 屋敷の五階に庭と園芸スペースが!?
エレベーターで六階へ降りると、フロアの半分以上を占めるであろう部屋と、もう一部屋、計二部屋があった。
大きな部屋の扉はとても頑丈そうで、厳重に施錠してある。
「この扉の先、何があるの?」
「そこは金庫だよ。さすがに開けたら本気でまずいし、そもそも開かないと思うから、この階は廊下だけだな。そっちの部屋も執務室だから入れない」
「すごく詳しいけど、まさかここも入ったことあるの?」
「……いや、金庫は開けようとしてバレて半殺しにされた。執務室は、仕事を手伝うことがあるからその時に入る」
この子本当、馬鹿なのかしら……。
ライトが頭を抱える理由が分かってきたわ!
廊下には背の低いテーブルとソファが置かれていて、窓はその近くに小さいのが一か所あるのみ。
そのため、カーテンを取り外すのもすぐに終了した。
「次は五階ね」
「ああ、うん。五階は庭だから、壁がほぼ全面ガラス張りなんだよな。つまりカーテンの量も多い!」
「え、五階に庭があるの!?」
「うん。魔界でもそうだったんだけど、ライト自分の家の上層階に庭を作る習性があるんだよ。多分、無意識に癒しを求めてるんだろうなと思って見てる」
五階へ降りると、キールの言っていた通りワンフロアのほとんどが庭だった。
庭のほかは、庭を囲むようにぐるっと廊下があるのみ。
廊下は両サイドともガラス張りで、陽の光が庭へ届くようになっていた。
そして何より驚いたのが――。
「――これ、どういうこと? ここって五階で室内よね?」
「ああ、うん。転写魔法で空を再現してるらしい。すごいよな」
転写魔法で空を再現。もはや意味が分からない。
しかもよく見ると、風があるのか芝生がや植木がわずかに揺れていた。
これも魔法なのかな……。
庭は綺麗に手入れされていて、その一角には直径一メートルくらいの円形のガーデンテーブルと椅子、それからゆったりできそうなビーチチェアが置かれている。
庭の隅には、柵で囲われた園芸用と思われるスペースもあるが、今は使われていないのかそこだけ土がむき出しになっていた。
――でも土がむき出しってことは、手入れはちゃんとしてるのね。
「魔界の家では野菜を育ててたけど、今は忙しすぎて時間がないんだろうな」
「ライト、ずっと仕事してるよね」
「……うん。あいつ基本的に全部自分で抱え込むタイプだから。サヴァントにも厳しいけど、自分にはもっと厳しいよ」
というか、十歳の男の子の趣味が野菜作りって。
いやまあ自由だけど。そういう子もいるんだろうけど。
でもなんかライトの場合、本当に誰も信用できないんだろうなって、孤独なんだろうなって泣けてくるわ……。
「キールももっとライトに歩み寄――ることはできないのよね、きっと」
「ライトにとって、オレは所有物の一つだからな。対等な関係にはなれない。だからヒマリには期待してるんだ。おまえは召喚獣とかいう謎ポジションだけど、完全な部外者だからまだ可能性があると思ってる。けっこう怖いもの知らずだし」
「それ、キールにだけは言われたくないわ……」
……私もけっこう、周囲に迷惑かけないようにって考えながら生きてきた方だと思うんだけど。
親族とはいえ、幼少期から実の親ではない人の家で暮らしてたわけだしね。
でもだからこそ――。
「まあ、自分に無頓着なところはあるのかも。怖いのは嫌いだけど」
「はは、それはオレも嫌いだよ」
私は「自分がどうにかしなきゃ」と思ってしまうタイプだし、それが怖いもの知らずとして映るのかもしれないわね。
ライトを見ていると、たまにそんな自分と重なって放っておけなくなる。
もちろん、深刻さには雲泥の差があるけど。
「――でも、ライトはなかなかに手強そうよ? 私にあの鉄壁を崩せるかなあ?」
「さあ? でもライト、なんだかんだでおまえに懐いてるんじゃないかな。プライド高いし立場があるからあんなだけど、けっこう気にしてると思うよ」
そう、かなあ?
少しでも心を開いてくれてたらいいな。
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