第22話 隠し扉から行くプライベートエリア

「ヒマリ待って、オレも手伝うよ」

「いいの? まあそっか、それがキールの仕事だもんね。それなら先に掃除しててもらえる? 掃除用具はここね。私はカーテンを洗濯するわ」

「カーテン? たくさんあるし、オレも集めるの手伝おうか?」

「……そうね。家広いし、部屋もたくさんあるもんね。じゃあお願いしようかな」


 私たちはまず、協力してカーテンを集めてまわることにした。

 ライトの家はかなりの部屋数があり、カーテン集めだけでもかなりの労力を必要とする。キールに手伝ってもらってよかった……。


「せっかくだから、上層階のカーテンも集めよう」

「……上層階?」


  でも、三階以上へ向かう道なんてどこにもないような――。


 不思議に思いながらもついていくと、キールは三階奥の壁に触れた。

 すると魔法陣のようなものが現れ、壁が消えて、そこに扉が現れて自動で開いた。


「えっ――!?」

「開いててよかった。閉まってたら、オレの力では開けられないから」


 自動ドアの先には狭い部屋があり、壁に操作パネルのようなものがついている。

 キールがパネルを操作すると、その小部屋が小さく振動して動き始めた。

 これって、もしかしてエレベーター!?


「――あれ、ヒマリは初めて?」

「う、うん……」

「……そう、なんだ? まあいっか。ここから先は、ライトのプライベートエリアなんだよ。だから閉じられてることも多いんだけど……今日は開いてたな」


 プライベートエリア!?

 そんな場所に出会って数日の私が入るのはまずくない!?


「ちょっと待って。それ、本当に入って大丈夫なの!?」

「ライトの部屋に入ったり、何か盗ったりしなければ平気だろ。今回は家事を任されてるヒマリの世話係として入ったんだから、不法侵入じゃないしな」


 不安しかない!

 ……でも、ライトのプライベートエリアかあ。何があるんだろう?


「上から順にいこう」

「そうね。その方が効率よさそうだし」


 私とキールは、いったん七階まで上がって、そこから順に降りることにした。

 七階へつきエレベーターが開くと、そこには広いトレーニングルームがあった。

 一番広いエリアには、恐らく筋トレ用と思われる様々な機材が置かれていて、その横にはシャワールームや簡易的なキッチン、冷蔵庫なども置かれている。

 端の方には、手書きで「立ち入り厳禁!」と書かれた看板のある部屋も――。


「この部屋、何?」

「そこはライトが戦闘訓練に使う部屋だな。入ると本気で死ぬから絶対入るなよ」

「……入ったことありそうな物言いね?」

「うっかり立ち入って、腕が吹っ飛んだことがある……。たまたま家にライトがいるときで、すぐ気づいてくれたから助かったけど……じゃなきゃ死んでたな」


 腕が吹っ飛んだ……!?

 この「立ち入り厳禁!」って、もしかしてそれがあったから?

 最後に付けられた「!」から、そこはかとなく怒りを感じる気がするわ。


「……ライトがいてくれてよかったわね。そこ以外のカーテンを集めましょう」

「うん。死ぬほど怒られたけどな……。あの部屋には窓がないから、そもそもカーテンはないよ」


 私たちは七階のカーテンをすべて外して、シャワールームに備えつけられているランドリーシューターへ落としていく。

 ガラス張りの面積がそこそこあって、七階のカーテンだけで結構な量になった。


「――よし、次は六階だな」

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