第8話 魔族はやっぱり魔族ってこと!?
「――まあとにかく、ここはそういう世界だよってこと。そこまではいい?」
「え、うん。まあ……多分」
いいかと聞かれてもよく分からないけど。
でも、ライトが全魔族を統べる魔神一族の末裔ってことは分かったわ。
トーストにベーコンと目玉焼きを挟んで食べながら、聡明そうな子とは思ってたけど本当にすごかったのか、なんてぼんやりと考える。
我ながら、とんでもない場所に呼ばれてしまったものだ。しかも間違いで。
「ん。あとはそうだな……ああ、そうそう。ここからは少し忠告を。魔族の社会は弱肉強食が当たり前で、上下関係が徹底されている社会なんだよね。だから死にたくなかったらオレの言うことにはちゃんと従ってね」
「…………え? はあっ!?」
ライトは曇りのない、しかしどこか圧を感じる黒い笑みを浮かべてそう言った。
多分これは、冗談ではない本気の警告なのだろう。
そう感じさせる、背筋が凍るような空気が一瞬にして広がった。
「ちょっと待って。なによそれ。つまり結局、私をそういうふうに扱う気ってこと!? 勝手に間違って召喚しておいて、ふざけないで!」
「――え? ああ、いや、べつにヒマリを召喚獣や奴隷として扱う気も、サヴァントにする気もないよ。というか、人間なんて弱すぎて役に立たないし」
ライトは一瞬ぽかんとして、それからおかしそうにそう言って笑った。
はああああああっ!?!?
ちょっとでも可愛いとか何かしてあげたいとか、そんなことを思い始めてた私が馬鹿だったわ!
こうして穏やかにしてても、根は魔族ってことね!
――でも、もしもライトが信頼できる味方じゃなかったとしたら。
そしたら私は、こんな何があるか分からない魔族の社会で、一人で戦わなきゃいけないってこと?
今の私は、すべてをライトに握られていると言っても過言ではない。
実際私は人間だし、魔族を造った魔神なんかとやりあえるわけがないし。
下手をすれば多分死ぬ。しかも簡単に死ぬ。
私は改めて自分の状況を冷静に考え、全身が一気に冷えるような、いつ底が抜けるか分からない巨大な落とし穴の上に立っているような、何ともいえない恐怖に支配されそうになった。
「――あはは。少しは自分の状況が分かったみたいだね」
「……それで? 私をどうするつもりなの?」
だめだ、声が震える。怖い。怖い怖い怖い。
私は、普通とは少し違う環境で育ったかもしれないけど、それでも中身は日本から出たことすらなかった平凡な人間だ。
突然こんな究極の裏社会みたいなところへ連れて来られても、対処できる頭脳も経験も持ち合わせていない。
「べつにどうもしないってば。ヒマリは魔族社会の外にいるからね。ただ、勝手なことをされると困るし面倒だから一応伝えただけ」
「勝手なことって何? 結局、魔神の権限で私の行動を制限するつもりってこと?」
「いや、それは魔神のっていうか……うーん……。まあすぐ分かるよ。でも、ヒマリの安全のために言ってることは理解してほしい。――それより、ヒマリはこれからどうしたい?」
ライトは少しの間どう説明すべきか考えているようだったが、諦めたのか、残っていた朝食を食べ終えると唐突に話題を変えた。
――これからどうしたい?
さっきまで「死にたくなかったらオレの言うことにはちゃんと従ってね」なんて脅迫まがいなことを言ってたくせに。
この子が何を考えてるのか、どういうつもりなのか、全然分からないよ……。
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