最下層 #03 - "毒"
アズールはアドミニストレーターの言ったことを思い出しながら、4端のどこかにあるという第二層へ行くための設備を探し始めた。正四角形の世界の内、南側の2端は海に沈んでいてそこに人間が通る用の穴や横道を掘ることはできない。となると設備は北の2点のいずれかにあるだろう…
アズールはこの世界の北へ行くことはあまりなかった。海にいれば食べるものには困らないし、洞窟に住んでいる“魔獣“たちに脅かされることもないからだ。
先の戦争の影響で、世界には魔法が使われた跡に残る瘴気による汚染も広まっていた… 空のない檻にはそうした瘴気で汚染された動物、魔獣たちも魔人と一緒くたに放り込まれているのだ。
「ここを通らなくちゃダメだね」
海の浜の洞窟は最下層の北方面に繋がっている。その中は魔獣の巣窟になっている… アズールは意を決して洞窟に潜り込んでみることにした。
洞窟の中は大きな空洞になっていて、魔獣の気配は感じられなかった。しかし暗がりを数分も歩いていると大蛇の魔獣が現れ、彼女の行く手を塞いだ。蛇の魔獣は虎の模様の緑にしたかのような迷彩色の背の色に、白光りする純白の腹の色をしていた。
「大丈夫… 落ち着いて」
アズールは触手に隠し持っていた黒曜石のナイフを逆手に構えた。このナイフの使い道は主に食べ物の貝を開いたり魚を捌いたりする用だ。コレは果たして魔獣にも通用するだろうか…
蛇の魔獣が上へ飛び上がり、アズールに襲いかかる。彼女は左腕から生えた触手で蛇をいなし、長い体の中間あたりをナイフで切りつけた。肉を裂き骨を削る感触がアズールの右手に伝わる… 蛇は緑色の血を噴き出しながら地に落ち、息絶えた。
「全然大丈夫だね」
アズールは微笑しながら言った。私は海の魔人、人間たちから恐れられた存在。並の魔獣など敵ではない... わずかだがそんな不敵さが身につき始めた。
二匹の蛇はそれほど迂闊ではなかった。その魔獣はアズールから距離をとり、代わりに舌から緑の毒液を飛ばしてきた。彼女は放物線状に襲いかかる液体を見事な横飛びで避け、二撃目を壁を上に向かって駆けて躱した。地面に着地すると、彼女は仕返しとばかりに右腕の触手から青い毒液を飛ばした。蛇が青い液体を受けると表面からジュウウウ…. と煙が立ち、口から泡を吹き出してのたうち回った。
彼女にとって蛇の魔獣を倒すのは容易だった。アズールは造作もなく洞窟を脱出し、浜から離れた丘に到着した。2端のうち北西側の端はもう目と鼻の先だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます