月下妃都美の日記 Day1
6月1日 木曜日 天気:晴れ
入学してからずっと気になっていた朧くんを彼氏にできた。
ファーストコンタクトは我ながら最悪なものだと反省。
いざ朧くんを前にすると、彼の盲目らしからぬ動きが今までの彼を語っているようで焦ってしまったかもしれない。
努力らしい努力をしてきていない私。いわば、「努力部門」で赤子同然。その私ですらわかる。彼の努力は異常なものだ。
見えていないはずの私を難なく見つける彼には、私の心の内側すら透けて見えているんじゃないかと怯えることしかできなかった。
……だからと言って、持ち得るカードを脅しのように使って乱暴に話を進めるのは今後やめよう。
遠くから見ていたあの子は優しい少年だった。
近くで見ても優しさが薄まることはなかった。けれどどこか感情を欠落させているのか……かわいそうという印象を片隅に持たざるを得なかった。
その証拠に2か月ずっと隠し続けた。彼なりのアイデンティティ? を初めて会話する私にわずか3分で壊されたのに、さらりと感情をおさめていた。
三日坊主なんて言葉がある以上、2か月なんて長い間こだわり続けたものを、赤の他人に破壊されたことを流すことなんて大人でも難しいと思う。
少なくとも私はあんなすんなりと流せない。
彼が流せる感情の種類が気になって、様々な角度から刺激を与えてみた。
結果として、彼は「感情を鎮める」のがうまいんじゃなくて、「感情を隠す」のがうまいだけだった。
その中でも、一般的に負の感情とされているものは顔に出ないようにしていることが分かった。
彼にとって負の感情は、本能を押し固めてでも隠さないといけない不都合なもの。と考えると、彼の身の回りは窮屈なのかと心配になった。
でも実際は、確かに彼の運命には残酷さがあったけれど、その中の暖かさに支えられたから、自分も応えたいという気持ちが、彼をそうさせたみたい。
正直、私は男が苦手。だから比較的マシな朧くんを彼氏にして、男除けができればそれでよかった。
でも、彼の過去を知ってしまったから。というよりかは、家族のために頑張ってきた彼に惹かれてしまった。
だから彼にとって素の自分が出せる場所が何か所あるのかは知らないけれど、私の居る場所が彼にとって安らぎの場所になるように頑張っていこうと思う。
邪な感情が繋いだこの関係だけれど、今の私は少し手放すのが惜しいと思っている。
これが恋愛感情としてなのかはわからないけど、彼のことは好きになれそうだ。
でも、今見えているのは彼の殻にすぎない。本心を知った後どうなるかはわからない。
けど、本心が見えるまでは……そばに居たい。
今見返したけど、私「したい」は多いけど、彼が私を手放さない前提で今後の目標を決めてしまっているわね。
明日は週末だし、帰りに本でも買って帰ろうかしら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます