episode4.8

「はぁ……」


「ちく……しょうっ!!」




 ルミナはアルデスの右脚を貫き、その身体を地面へと叩きつけた。そしてルミナは続けて、アルデスの意識を落とすために首を絞める。


既に力を使い果たしたのか、抵抗するアルデスのもがきはルミナに通用せず、そのまま意識を失った。苦悶に満ち、白く鋭い歯を食いしばりながら白目をひん剥いている。


 落としたアルデスをゆっくりと、側にある岩の影に置いて、その場をルミナは去る。しかしルミナも相当疲労していた。




「サダルの……METSISの元へ、向かわなくては……!」




 着ていた衣服はところどころに泥と血が付き、ボロボロに擦り切れている。右脚を引きずりながら歩く様は、とても痛々しいものであった。


そうして疲労困憊の中、サダルを探すために戦場を見渡せば、あれほどあった人間たちの声や兵器の音、その全てが消えてしまっていた。聴こえるのは地面を打つ雨の音だけである。


首と目を前方に向けて、状況を観ようとした、その時——。






白き光がルミナを包んだ。






 その直後、凄まじい爆発音と衝撃波がルミナを襲う。思わず地面に伏せ、吹き飛ばされないよう窪みを掴む。


一体何が……!?、と思いその光の発生源を見ようとするが、一向に光の靄が取れず、目を細める。


数秒。衝撃波が止むまでの時間である。その後ルミナは立ち上がり、光の靄が晴れるのを待った。


 だんだんと晴れていく大気にうすらぼんやりと、何か建物の残骸が見えてくる。




「まさか……!!みんな!!」


「そこで止まれ。ルミナ」




 駆け出そうとするルミナを制止したのは、サダルである。ルミナの姿とはまるで反対に、かすり傷一つついていない。




「あらぁ~久しぶりね、ルミナ。まさかあの銃を使ってもアルデスが勝てないだなんて」


「サダル、あっちにアルデスいたよ……。死んではいない、と思う」


「ルーノ……テレス……」


「君をアルデスと当てて正解だった。お陰で君以外の制圧は完了したからな」


「っ!!」


「君が見た光は、ある爆弾によって引き起こされたものだ。あれは小型だが、核分裂による相当の破壊力を持っている……さあ、あとは君だけだ!ルミナ!!」




 アルデスを除く、サダル一派のMETSISたちがルミナを囲む。その中心でルミナは静かに拳を握り締め、下を向いていた。


じりじりと距離を詰められる。その時突然、ルミナは再び光粒子を煌めかせ、新たに構え直した。顔には覚悟、目には涙があった。




「その身体で、この人数差でどうするつもりなのだっ!ルミナ!」


「……私は、みんなの期待に応えたい」


「はっ、その望みはさっき、あの小型核爆弾で消え失せたのにか!」


「まだ消えていません。私の、"ニュイ・エトワレ"を持ってすれば……!!」


「なにっ!?」




 サダルの表情が歪むなか、ルミナは静かに、小さく微笑む。




「……起動っ!!!」




 ルミナは手を空へと伸ばし、光粒子を最大開放する。やがて雲間へと一筋の柱になって、立ち昇っていく。


次の瞬間、世界からは光が失われていた。

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