episode4.7
アルデスが構え、ルミナも構える。するとアルデスはルミナの不意を突くように、懐からある
「っ!!」
空気が叫びを上げる。銃口から一筋上がる煙と火薬の匂い。そして二の腕へ、ずしりとした弾丸の衝撃がルミナの脳機関へと伝わる。
「っ……!?」
重さは感じた。しかし痛みはない。まるで、トリックで消されてしまったかのように、だ。ただ、なんとも言えぬ
アルデスは銃を捨て、思わず破顔する。
「はぁーはっは!!こんなに簡単に成功するたぁ、思ってもみなかったぜ」
「一体なにを……!」
「アタシは親切だから教えてやる。もっとも、アタシは使いたくなかったんだけど、な……どうにもアンタは、全ての十二宮兵器を使えるらしいじゃあねえか。そうなるとアタシらは誰も敵わないだろうよ……」
しかぁし!!、と耳に鳴り響く声で言い、指をルミナに指を差す。
「アタシらは考えた……そんなアンタから勝利して、アンタの
「なっ!?」
ルミナは他の十二宮兵器を出そうとした……が、使えない。変に光粒子が体内と体外を巡るだけである。
拳を震わせ、考える。アルデスが嘘をついているようには見えないし、なにより兵器が出せないことが事実としてある。
「……なら、あなたと私、どちらの金牛宮器が強いか……やるしかなさそう、ですね」
「そうだっ!!そしてアタシの前に散って人類もろとも、アンタの最終兵器で消し去ってやるよぉ!!」
「「《金牛宮器:アルデバランっ!!》」」
両者光粒子が加速。それぞれ同じように煌々と、まるで生命の灯火が剥き出しになったかのような角と炎を纏う。
駆け出し、衝突——。大地が戦慄き、大気が震える。側に生えていた小さな草木が一瞬にして黒ずみ、散った。
「くっ!!」
「こんなもんじゃねぇだろぉ!!」
まずい!!ルミナは即座に腕の壁を張る。しかし同時に腕が軋む音が、ルミナの耳に報せとして届く。
アルデスの振り下ろした脚の先、約十五メートルにルミナは倒れる。
「おいおい、まだ勝負は終わっちゃあいねぇぜ……」
そう発する言葉を遮るように、ルミナは脚を震わせ右腕を押さえながら立ち上がった。
「はぁはぁ……」
「ま、こんなウォーミングアップはもういいだろ?……次は、最高速度でその腕、ぶち抜くぜ」
両者、またも同じ構え。同じように兵器を顕現させ、睨み合う。
曇り空から降る一粒の水晶。いつの間にか降り出した雨と、両軍隊の喧騒の中で、互いが戦いの狭間を観ていた。
両者、動く。
タイミングは同じであった。しかし、負傷からかルミナの脚元に力強さは感じられない。その刹那、アルデスは破顔する。
「戦いの中で生きてきたアタシに勝てるわけねぇだろうがぁ!!!」
「くっ……!」
「貰うぞ!!そのからだぁぁ!!!」
繰り出される大脚が頭を捉えようか、ルミナの脳機関に言葉が降った。
『ルミナを、信じるよ!』
『アンタなら出来る』
『ルミナなら、きっと——』
「っ!!」
アルデスが繰り出した大気をも切り裂く大脚の先に、ルミナはいない。姿を消したのだ。
辺りに響くのは波紋の音。雨が大地に打ち付けられる音。そして、戦士達の木霊。そのはずはないが。
アルデスはその時、全身の集中がある一点へと注がれるのを感じた。
「まさか——ぐはぁっ……!!」
振り向き様に数十メートル飛ばされる。泥となった大地と雨に汚れながら、瞬きする間に二撃目がアルデスを襲う。咄嗟に腕で防ぐも、いなしながらルミナと距離を取る。
そして両者、目を向ける。
「アンタ、いつの間に……!!」
「……私はこの声に、応えなくてはならないんです。アルデス」
「はぁ?声!?なに言って——」
「だから、あなたをここで止めなければならないのです。彼らの
「くぅっ……!!」
繰り出す繰り出す、繰り出す。右腕正面、続けて蹴り。金牛宮器特有の剛力さと、ルミナの穏やかな心の柔力を掛け合わせて。
アルデスを押し続け、ルミナは力を尽くし続ける。雫の一滴が大気から地面へと落ちる、その間に何発も何発も、攻めと守りを尽くし続ける。
「くっ……ぅそおがぁぁ!!!」
「はぁ…はぁ……!!!」
両者距離を取り、その間二十メートル。それぞれの攻防によって、ボロボロにした身体を見合う。
「……まあ、アタシはこれが望みだから良いんだけどね……!!でも、そろそろ決着つけさせてもらおうか……はあぁぁぁ!!!」
アルデスの身体が赤く染め上がっていく。光粒子の多量分泌であるがそれはまるで、可視化された闘気のように立ち昇っていく。
「私は負けません……!彼らを守るのは、私だから……!!」
ルミナにも光粒子の青々とした煌めきが、体外へと立ち昇っていく。それが、最後の爆発となる。
「行くぞ!ルミナ・メルトウェルぅ!!!」
「はあぁ!!!!」
地面の抉れる、その時の狭間。勝負は一瞬にして、判断された。
アルデスが繰り出した右脚蹴りを間一髪かわし、ルミナが繰り出した右拳が、アルデスの右脚を捉えていた。
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