episode4.5

 ポラリスへと戻ったルミナとクレス。数日見なかったであろうその集落は来た時よりも強固に、強烈に。その姿を異様に見せていた。


もとより立っていた異様な材質の建築物たちは、先の戦闘から立ち直っており、その城壁とも呼べる部分には今まで無かった武器達が頭を揃えて並んでいる。


側から見てしまえば実に異様。その一言であるが、彼らは人間としてMETSISに立ち向かおうとしている、反発精神からきている勇ましい異様さであることが見て取れる。


 集落の城壁外へと送り届けられたルミナとクレスは片手間に集落に入ろうとしたが、どうも簡単にはいかない。


METSISの性質をよく知らない集落の門番が執拗に身体検査をし、持っている物を調べ、そしてようやく通された城壁内には、目を疑う光景が待っていた。




異常なまでに人が多い。




「あ、ルミナ!クレス!」


「おや、やっと帰ってきたのかい」


「タウリー、クラウド!!」


「ばあさん……相変わらず元気そうだな」




 数日間とはいえ、なかなか戻ってこない二人を心配していた様子のタウリーとクラウド。ルミナとクレスの二人から、集落での出来事を共有する。




「へぇ~……あのMETSISと、数百年前から生き続けるあんたの生みの親の娘、ねぇ……こんな戦争よりよっぽど興味があるよ。是非行ってみたいもんだね」


「でもMETSISのサダルたちを守るっていっても……この状況じゃなかなか厳しそうだけど……」


「そういえばなんでこんな人が居るんだ?この集落、こんなに人いなかっただろ」


「……実は、僕たちが知らないうちに他の集落をサダルたちが占拠してたみたいで。そこから逃げてきた人たちがアルコルの噂を聞きつけて来たみたいなんだよ」




 クレスの問いに小さな声でそう応えるタウリーには、何か言いたげな、心配そうな顔が見てとれた。


そして辺りの人々を見る。ここで配られた武器を片手に、まるでここに仇がいるかのような顔をした、恐らく命からがら逃げてきたであろう者たちが幾人もいた。その出立ちはまさしく狩人である。




「とりあえず移動しよっか。サザンクロスさんの家なら今は人が居ないはずだし、あの人もルミナとクレスのこと、心配してたからさ」


「そうですね、行きましょう」














         ◎◎◎














 サザンクロスの家へと入ると、今までの喧騒が嘘のように静まり返り、サザンクロスの部屋へと通じる道にも誰一人として人がいなかった。




「サザンクロスさん!ルミナとクレス、帰ってきたよー!」


「……!!おお、帰ってきたか!無事で何よりだ……!」




 その後、先ほどタウリーとクラウドに話したことをサザンクロスにも伝える。その中で、サダルたちを守ってほしいという部分に、眉を顰める。




「守ってほしい、か……。大分無茶な願いであるように聞こえるが……」


「あ、それに関してはルミナに一任して欲しい。あの資料・・・・通りにいけば上手くいくはずだから……!」


「……ほう。ルミナ、詳しく聞かせてくれないか」




 イルミナの資料をもとに、ルミナがサザンクロスへと説明をする。その方法に誰もが唖然としていたが、サザンクロスだけは何やら訝しむように聞いていた。


やがて説明を終えると、サザンクロスがルミナに質問する。




「……本当にこの方法で、彼女たちを生捕り・・・に出来るのか……?」


「はい。彼女たちを守る・・ことが出来るそうです。不確かではありますけど……」


「……それは、君の命を危険に脅かすことになるはずだ。それでも、君にやる価値はあるのか?」


「分かりません……でも、ここで守らなければきっと、後悔すると思うのです。だから、私は——」




「敵襲ー!敵襲ー!!」




 外で門番が声を張り上げる。




「METSISだ!!!METSISどもが来たぞぉー!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る