episode"3"

episode3.1




         ○○○













 俺は、この集落に執着なんか無い。だから今起きてる事件だって、本当は興味がない。




「そっち異常はあるか?」




 一緒に巡回している名前も知らない男がそう聞いてきた。特に異常もないため、その旨を伝える。




「こちら、異常なし」




 そう伝えまた二人無言のまま、小雨降る夜を電灯を頼りに歩く。これで二周目だ。今のところ、信号弾も確認出来ない。


一緒に巡回している男が、こちらに話しかける。




「なあ、今日はもう出ねえんじゃねーの?」


「……さあな。出なければ、それはそれで良いことだけどな」


「はぁ~……早く帰って寝たいぜ。全く、こうなったのも、あの余所者共が来たからだ!余計なことしやがって……」


「お前の言うことも分かる。でも、このまま野放しってのも埒があかないからな。今日もしこれで終わってくれれば、それはそれで良いだろう?」


「……まあ、そうだな。くあぁ~……眠いぜ」




 雑談を終えて、また沈黙が横たわる。まだまだ長そうな夜だ。出るなら早く出てくれれば良いものを……


……そういえば、この集落に初めて来た時も、こんな感じで小雨が降っていたな。それでいて少し肌寒い——


「おい、誰だっ!!」


「!!」




 巡回していた男が、腰からナイフを取り出して構えていた。どうやら建物の陰に隠れたらしい。


信号弾を構える。いつ何が起こってもおかしくない。背中に嫌な汗がつたう。妙な息苦しさを感じる。雨のせいだろうか?


 陰に隠れていたモノが姿を現す。電灯で照らすとそれは、何やらオブジェのようなものであった。これに、一緒にいた男とともに胸を撫で下ろした。




「なんだよ……ビビらせやがって。なあ?」


「あ、ああ。……でもこれは、何だ?」


「……知らねぇよ。子供が作ったんじゃないのか」


「ま、そんなとこだろう。巡回を続けるぞ~」




 ……いや、さっきの見回りでこんな物あったか?もしあれが、事件となんらかの関係があるとしたら——


「〝;″◦メ、タ……感、知。ハイ、ジ、ヨ………」


「「!!」」




 建物の陰に隠れていたその不気味なモノが、全貌を露見する。まるで人のような四肢を持ち、しかしその出立ちから人間性を全く感じさせない雰囲気を醸し出していた。




「おい、信号弾!!急げ!!」


「わ、分かって——ぐはぁ!!」


「………ハ、イ〝ヾョ……」




 信号弾を打とうとした男が一撃で吹っ飛ばされた!!おい、どうする……どうするっ!!




「っ!!クソ!!」




 身を隠せる場所!身を隠せる場所!!——側にあって、"アイツ"から逃れるために建物の陰に逃げ込み、持っていた信号弾を信号拳銃へと詰めて、打つ準備をする。


震えが、止まらない……!!




「(クソッ……クソクソクソ!!……止まれ、落ち着け落ち着け……くっクソが!!)」




 玉を詰め終わり、上空に向かって打とうとした、その時——


「ハッ……;″◦イェ……ョ」


「!!」




 ヤツの左腕が、振りかぶる。その手先が獣のような大きい爪へと変わっていた。ああ、死ぬ。全てがゆっくりと、ゆっくりと見える。瞼を下ろす。




「俺……まだ——」


 ……目を開けると、その先にヤツは居らず、その代わりに——




「はぁはぁ……助けに来ました!」


「——アンタ、どうしてここが!」


「ホープのお陰さ!」


「ワン!」




 ヤツはルミナに吹き飛ばされたのか、ルミナの正面に倒れていた。しかし、すぐに立ち直り、ルミナを捉える。




「あなたは信号弾を!」


「あ、ああ!分かった……でも、アンタは?」


「予定通り、戦います!……後は任せて」


「!!……頼む!」


「はい!」




 物静かな男は、すぐに準備が完了した信号拳銃を空中へと捉え、引金を引いた。


玉が押し出され、そのすぐ後に空中で炸裂した。煌々と光る信号が、小雨降る不気味な暗闇を照らした。




「おじさん、こっち!」


「ああ!」




 タウリーに男はついて行った。ルミナと謎の犯人と思しきモノから少し離れ、戦闘に巻き込まれずかつルミナが負けた場合に逃がさないための場所へ行き、待機となった。


ちらほら、信号弾を確認して集まった男達も数人居る。先程飛ばされた男は、どうやら男達によって救出されたようだ。




「おい、しっかりしろ!……駄目だ意識がない!俺はこいつを長の家へ運んでくる。後を頼んだぞ!」


「おう、任せとけ!!」




 そういってガッチリとした男が、飛ばされ意識のない男を担いで走って行った。返事をした男は、犯人らしきモノを見てぽつりと呟く。




「おいおい……なんだよ、アレ……!!」




 犯人らしきモノに視点を移す。すると先程とは違う腕の形をしていた。まるで銃火器のような——さらに、別の方の腕をまるで剣のように変形させていた。




「なあ君!アイツはなんだ!?」




 咄嗟に先程の少年、タウリーに質問する。しかしタウリーは首を横に振った。




「知らないよ!……でも、アレは人じゃない!きっと、こう……多分機械の類だよ!ロボットとかアンドロイドとか!!」


「……!なんでそんなモノが——」


「おじさん!ちょっとこっち来て!!もう動けるでしょ!」


「っ……ああ。何か策があるのか?」


「うん!」




 少年、タウリーに連れられて、ヤツに見つからない場所へと移る——












         ◎◎◎













 ルミナが対峙していると、何やら犯人らしきモノが小さく囁きを放っていた。




「〝ヾsIS……ハ、。;ジ‥……」


「(……何か、呟いてる?)」


「ハ。〝ヾッッ!!!!!!」


「来た!」




 ルミナへと走り迫るモノは、ルミナへと銃口を向け一発、撃つ。凄まじい銃声が空に轟く。それをスレスレで避け、モノへと視線を移すと、すでに距離を詰めていたモノの蹴りが、ルミナの腹を捉えていた。




「ガハァぁっ!」




 後方の家屋へと蹴り飛ばされ、家屋が崩れる。瓦礫とともに地面へとルミナが倒れる。かなりの豪脚で吹き飛ばされていたルミナは、すぐに起き上がれないでいた。




「うっ……ぐあっ……(つ、強い……!起き、上がれな——)」


「メト、シーs…〝ヾジョ……」


「(まずい……このままでは……!)」


「パィ…ジョ……!!」




 変形し、剣のような形状へと変化した右腕が振り下ろされそうになった——その時。




「おい…化け物!こっちだ、掛かってこい!!」


「(!?…あれ、は……)」




 そう声を張り上げ、モノを挑発し注目を集めたのは——あの物静かな男であった。




「来い……俺が、相手だ……!!」

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