王女暗殺計画

レイナ王女暗殺計画。

あまりにも衝撃的な言葉に、レイナは時が止まったような感覚を覚えた。



「……まさか」



ようやく喉から抜けでた声。

あまりにかすれ、砂を吐いているよう。


暗殺計画の情報を掴み、レイナに語ったクレイも苦い顔をしていた。

何らかの行動を取るにしても、まずカムハを狙うと考えていたからだ。

最初の狙いが王女となると、クレイは動きにくくなる。

事を起こされてから、罠にかけようと考えていたのだから。



「……計画の内容は分かっているの?」


「大体は」


「毒殺とか?」


「いえ、襲撃です。白奉官のひとりが、王女を襲うというものです」



クレイが淡々と語る。


暗殺の実行役は、白奉官で働く者を装って、王女を襲うのだという。

計画が成功すれば、最悪の場合、白奉官は解体となるだろう。

王家との繋がりを断たれたカムハ家も、力を失うことになる。

白奉官とカムハ家によって力を取り戻した改革派も失墜する。

ニハの国は、再び保守派が支配することになるだろう。



「……防げる?」


「防ぐつもりです。そのためにここまでやってきたのですから」


「お父様に話す?」


「王陛下に話せば、保守派の企みは防げるでしょう。しかし我らの企みも進まなくなります」


「……そう、だよね。まだ、保守派は力があるもんね。長引くことになっちゃったら、巻き返されるチャンスも与えそうだし」


「そういうことです。主導権を我らが握っているうちに、保守派の力を奪う必要があります。短期決戦以外、我らには道がないのです」



クレイがレイナを見据えて言う。

逃げないでくれと、説得しているような目。

レイナは数瞬考え、ぐっと唇を結んだ。



「そんな目で見ないでよ。最後までやるから」



レイナは諦めたようにして両手のひらを見せた。

次いで、離れたところで控えている侍女を呼ぶ。

急いで駆けてきた侍女が、レイナとクレイに向かって礼をした。

その侍女は、いつもレイナの傍にいる侍女ではなかった。



「……こちらの侍女は?」


「私の忍者さんよ。護衛もしてもらっているの」


「ほう。護衛“も”」


「そういうこと」


「ずいぶん強かになったようですね」


「誰かさんほどずる賢くはないけどね。でも、私も無策でここまでやってきてないから」



だから大丈夫と、レイナは頷いてみせた。

もちろん護衛を付けたところで、暗殺者を確実に防げるとは思っていない。

レイナの魔法の力も合わせても、撃退できるかは五分といったところだろう。

しかしクレイもある程度対処に回ってくれたら、話は別だ。

上手くいけば、誰も血を流さずにすべてを終わらせられるかもしれない。



「私も頑張るから。クレイはちゃんと私を守ってよ」


「無論です。子供一人護る程度、大したことではありません」


「あー、もう、ホントにいちいち腹立つなあ。全部終わったら、覚悟しておいてよね」


「期待して覚悟しましょう」



クレイがにやりと笑う。

レイナは苦笑いして、クレイを追い払うような仕草をした。

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