ひとつのベッド。女がふたり。
夢の中で。
ソラは誰かに会った。
それが誰なのか。ソラには分からなかった。
玲菜はどうしているかなと、ソラは誰かに尋ねた。
すると誰かは、なにかを囁いた。
その言葉は聞き取れたが、頭には残らず、泡になって消えた。
「……ん、ぐ?」
朝の淡い光が、ソラをくすぐって起こした。
目が覚めた瞬間、ソラは夢の出来事を思い出そうとしたが、すぐに思い出せなくなった。
「おはようございます、ソラさん」
耳元で、メルの声が鳴った。
ソラはどきりとして声に振り向く。
そこには、メルがいた。しかも同じベッドに。
「う、わ、あ!?」
「わ、だ、大丈夫ですか?」
「だ、だ、大丈夫、あ、いや。ちが。そうじゃない、メルが、大丈夫??」
「……え、大丈夫ですが」
「へ、え、あ、そう? それなら、うん、はい……」
落ち着いているメルを見て、ソラは冷静さを取り戻す。
そうだ。そうとも。同じベッドで寝たからといって、やましいことはないのだ。
この世界ではきっと、旅の仲間と同じベッドで寝るのは当然のことなのだ。
「……う、っるさい、なあ……」
すぐ傍で、シェルトラの声がこぼれた。
ソラはどきりとして、声が聞こえた方へ振り向いた。
「は、あ、なああ、シェルトラ、さん!?」
「うるさいって言ってんの! ばか!」
「あ、わ、あ、ご、ごめん! で、でも、なんで、ここで寝てるの??」
「はあ!? あんたがふたつしかないベッドのひとつで、早々に寝ちゃったからでしょ!?」
「もうひとつで寝ればいいじゃない??」
「あっちは、グンバとオドで埋まったのよ。隙間がなかったの」
「あ……そういう、こと」
「……ソラ、あんた、変なこと考えてないでしょうね」
シェルトラがソラを睨みつける。
ソラは委縮して、首を大きく横に振ってみせた。
シェルトラとメルが言うには、旅の最中であればこれくらい当然のことだという。
ほとんどが野宿になるし、狭い場所で肩を寄せ合って寝ることもあるからだ。
「ま、まあ、そうか」
「……変なこと考えたら、潰すから」
「なにを!?」
「なにをだと思う?」
「……考えたくないです」
「でしょ? だから、変なことは考えないことね」
シェルトラが意地悪そうに笑う。
ソラは苦笑いし、肩をすくめるのだった。
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