第28話 かわたれどき
そろそろ色々なことに限界が訪れそうな状態だった。精神も肉体も、揃って細い糸の上を歩いているような心持ち。
お姫様と違って眠らなくてはいけないはずのあたしは、また今日も眠ることができなかった。
薄いレースのカーテンだけが掛かった窓辺、夜の暗がりを溶かすように光が差し込んでくる。
こういう時間のことを、何と言うのだっけ。
バカな自分と違って頭のいい弟が、いつだったか辞書を見ながら教えてくれたはずなのに。思い出せない。だからあたしはダメなんだ。
何を考えても、いつだって最後は自己嫌悪に着地する。結局のところ、あたしがいけないのだと。必死で取り繕って、難しい漢字や言い回しを使ってみたりして、何の意味もないのに無駄なことを。
ワガママなのに愛されて、残虐なのに許されて、羨ましいと思いながら書いたお姫様が、どんどん妬ましくなって。処刑して、首を斬っても、現実のあたしは何も変わらないのに。
窓の外、椿の生垣の向こう、あたしと弟が並んで笑って歩いた日もあったのに。
今はもう。
誰の顔も見えない。
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