第25話 灯り

王族の誕生日には、城下町全ての家の玄関にランプが掲げられることになっています。色とりどりのガラスで作られたランプの灯りが、夜の町を美しく彩るのです。

お姫様はずっと、その光景を見る前に寝かしつけられていて、十歳の誕生日に初めて実際に見ることが叶いました。

お城のてっぺんから見下ろした城下町が輝くのを、お姫様は大喜びで見つめました。大きな瞳の中で、何色もの灯りが踊ります。


「とっても綺麗だったのよ」

「いい誕生日だね」


 あたしは見たことがない、綺麗な光景。自分の誕生日を、大勢の人が祝ってくれる喜び。

 羨ましくて、羨ましくて。


「ねぇ、私が首だけじゃなかったらとっても苦しいと思うわ」

「え?」


 あたしの手はお姫様の首を、ギリギリと力強く締め上げていた。慌てて手を離すと、きゃあと言いながら転がったお姫様の白い首には、あたしの手形がくっきりと残っている。


「ごめん」

「まぁ、いいわよ。許さなかったとしても、何もできないし」

「ごめんね」

「そういう日もあるんじゃない? 私もむしゃくしゃして侍女をクビにしたこと何回もあるわよ」

「うん、ありがと」


 今日は早めに眠ることにする。自分をコントロールできなくなってきているのは、よくない兆しだった。

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