第23話 白

 お姫様の首の断面から覗く骨がとても白くて、あたしはそれを見る度になんて綺麗なのだろうと息を漏らす。

 骨なのだから、白くて当然と思っていた。けれど実際にはそんなことはなくて。どんなに肉をこそげ取ったって綺麗にならない骨もあるのだ。薄汚くて、ヒビの入った、価値のない、骨も。


「アナタ、人の世話をする仕事でもしていたの?」

「どうして?」

「だって、髪を洗うのも乾かすのもとても上手よ。侍女の誰よりも上手だわ。アナタがもしお城で働いていたら、私の専属にしてあげてもいいくらいに」

「それは何より」

「私を運ぶ手付きも丁寧だし、誰かに仕えていたとか?」

「…………まぁ、そんなとこ」

「やっぱりね!」

「生首の扱いには慣れてるし」

「何か言った?」

「いーや。今日の入浴剤はどの匂いにしようかと思ってね」

「嗅ぎ比べさせてくれたら選んであげるわ!」

「はいはい。持ってくるから待ってて」


 お姫様が入らないよう、外から鍵を掛けた部屋。扉の隙間から漏れ出た冷気が足を掠めて涼しかった。

 風呂場の手前の廊下。クローゼットの中にある大量の入浴剤の中から適当に選んで持っていく。


 お姫様の選んだ入浴剤を入れた湯船は、白く、濁った。

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