第21話 飾り

王様はお飾りだ、と誰かが口にしたことがあります。宰相がいなければ、この国はもう滅んでいるだろうと。それは小さな独り言のようなものでしたが、瞬く間に広まってしまいました。噂話に過ぎなかったはずが、それをもみ消そうとする騎士団の動きが逆に信憑性を増してしまったのです。

結局、火消しは間に合わず国民の不信感は増していくばかり。王様が国民のためになることを何か一つでもしていたなら、暴動が起こるまでにはならなかったかもしれません。けれど王様は、可愛いお姫様の浪費によって空になりかけた国庫を満たすため、重税を課しました。

不信感は不満に変わり、そして爆発します。スラム街は更に荒れ、守るはずの国民と敵対することになる騎士団の面々の中にも王様への不満が積もっていきました。


「ねぇねぇ、私の国を歴史で習った記憶なんかはないの? ずっと未来に来てしまったなんてことは?」

「ないね」

「どうして調べもしないで即答するのよ! アナタが忘れているだけかもしれないじゃない! 勉強から逃げた日に教わる内容だったかかもしれないわよ!」

「姫さんと違って真面目に授業受けてました〜」

「私だって……片手で数えるくらいしか逃げてないわ……!」


 何度言っても納得しないので、押し入れから歴史の教科書を引っ張り出して見せたが、書物を読む気になんてなれないと転がって逃げられてしまった。


 お姫様の国が歴史の教科書に載っていないことは、あたしが一番よく知っている。

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