第18話 椿
お城には国内外から様々な珍しいものがやってきました。時には旅の一座が、時には商人が、そして時には他国の貴族たちが。
交流を深めにやってくる他国の貴族たちは、特に珍しいものを好んで持ってきました。
その中に、赤い大ぶりの花を咲かせた枝が。
見たことのない形をした花を見て、それは何かとお姫様が尋ねます。
『これは椿といいまして、東方の国より我が国へ納められた物の一部です』
『花も葉っぱもしっかりしていて面白いわ!』
『お姫様はお花がお好きですか?』
『まぁ、そうね、それなりに好きよ』
『そうですか、それでは次から必ず何か花も持ち寄ることにしましょう』
そう言って笑う男に、お姫様はいい心掛けだわと満足気に笑い返しました。
結局彼が再びお城へ足を踏み入れることはなかったのですが。
「ねぇ、あそこに茂っているのって椿?」
お姫様がベッドの上でびょんびょこ跳ねながら、少し高い窓の外を必死で覗き込んでいた。
お姫様のために踏み台になるようなものを置いてやろうと思って早くも半月が過ぎている。お姫様はずっと跳ね続けることになるだろう。
いい運動だ。
生首に筋肉が付くとしたら、首が太くなるのだろうか?
「あぁ、椿だったと思うけど」
「いつ咲くの? 明日?」
「えぇーと……うーん、あと二ヶ月くらい先かな」
「そんなにかかるの?! もっと早く咲かせてよ!」
「無茶言うな」
椿の花が咲く頃に、この生首はどうなっているのだろう。たぶん答えは知っていて、決めていて、けれどまだ先延ばしにして。
そういえば、椿の花も、まるで生首みたいに落ちるのだっけ。
そんなことを思ったりした。
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