第16話 面

お城では年に二回、仮面舞踏会が開かれます。

参加者は全員貴族ではありますが、爵位によって区別出来ぬよう、仮面を付けるのです。

とはいえ、ゴテゴテと金銀宝石で飾り立てた仮面に、刺繍やレースなどの装飾が見事なドレス、髪飾りネックレス、ピアスに指輪、身にまとう全てで階級の差が歴然です。

当然、お姫様は誰よりも豪華に着飾りました。

お姫様に関しては、身長だけでもうバレてしまうのですが。

貴族の子どもたちには参加権がありませんので、会場内にいる子どもはといえばお姫様だけなのです。


「仮面舞踏会は楽しかったわ、誰もが私を大人扱いしてくれるの」

「それはいいね」

「普段はあれもダメこれもダメ、勉強しなさい練習しなさい怒られてばっかり。毎日仮面舞踏会でもいいくらいだわ」

「そんなに毎日怒られて、姫さんは嫌にならないのかい? 親が嫌いになったりさ」


 お姫様はうんうん唸ってから答えを出す。それはあたしには随分と眩しい答えだった。その答えが返ってくることは分かっていたのに、それでも聞かずにはいられなかった。


「嫌なものは嫌だけれど、愛してくれているからだと分かるから、嫌いにはならないわ」

「そっか」

「でもお父様とお母様だけよ! 教師たちは嫌い! 本当はクビにしたかったけれど、もう他に人がいないから我慢してくれと言われてしまったのよ」

「十人も二十人もクビにされたらそりゃ人もいなくなるさ」

「でももうお勉強もしなくていいのね。問題を解く手がないもの」

「そうだね、教師もいないしね」


 お姫様は満面の笑みを浮かべ、人形遊びに戻るのだった。

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