第15話 猫

お姫様は猫が嫌いでした。

犬と違って言うことは聞かないし、お姫様のお気に入りのドレスに爪を立てたり、毛を付けたりするからです。

お姫様のことを猫のようだと言う人もいました。毎日毎日気まぐれに寝てご飯を食べて行きたいところに行って好き放題生きて、そんな猫と一緒にするなとお姫様は憤慨しましたが、大抵の人が似ていると思ったことでしょう。


「猫と犬なら犬の方が好きでしょう?」

「なにその決めつけ……どちらかと言えば猫の方が好きだよ」

「どうしてよ!」

「絡まなくてもいいからさ」

「言うこと聞かないじゃない」

「遠くから眺めるだけでいーんだよ、猫ちゃんは。あぁ、犬も猫も飼いたくはないよ?」

「薄々思ってはいたけれど、アナタ、だいぶ捻くれているわよね」

「姫さんに言われたくないわ」


 下くちびるを突き出して遺憾の意を示せば、拗ねたように首が転がる。髪の毛の隙間から首の断面がちらりと見えるけれど、肉にも骨にも不思議と嫌悪感はなかった。

 お姫様を拾った裏山にはあれから何度か行ってみたが、首から下が彷徨い歩いていることはなかったし、王様やお妃様の首が転がっていることもなかった。


 ただ、野良猫がセミと戯れているところには遭遇した。

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