第14話 月

まあるいまあるいお月様ひとつ。

窓から見上げるお空にひとつ。

腕を伸ばして指輪に乗せる。


お姫様の手に、月のリングがはまっています。お姫様は言いました。


『おつきさまがほしいわ!』


当然、月を手に入れることなどできません。家臣たちは大慌てで解決策を考えます。流石の王様お妃様も、月がほしいというワガママを叶えることはできません。

結局、まんまるお月様にそっくりの、大きくてそれはそれは美しい宝石が一つ、お姫様の手元に収まったのでした。


「ここでもおつきさまはキレイなのね」

「そうだね。今月の終わりに満月らしいよ。スーパームーンだって」


 月の満ち欠けのスケジュールなどさっぱり分からないあたしは、やっぱりスマホに頼るしかない。文明の利器、最高。


「すーぱーむーん?」

「とってもキレイな丸いお月様ってこと」

「まぁ! それは楽しみね! でも私のものにはならないのよね……残念だわ」


 しょんぼり転がるお姫様の後ろ姿は、金色の髪がちらちらと輝いて、まるでスーパームーンだなと、思った。


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