第13話 流行

お姫様は流行の最先端にいました。

お茶会でお姫様が青が好きと言えばそのシーズンは青のドレスが大流行り、黄色が好きと言えば皆いっせいに黄色のドレスにお召し替え。そんな生活が当たり前のようにあって、お姫様は毎日が退屈でした。

自分のすることに文句を言われたりすることは大嫌いでしたが、何もかもが自分の言う通りというのもつまらないものなのです。


「今の社交界の流行は何なの?」

「社交界? そんなのはないけど、今流行ってるのは……なんだろうな」


 タピオカはもうだいぶ下火なんだっけ?

 考えたって分かるはずもなく、あたしはすぐスマホに流行りを聞いた。

 【流行り 2023】と打ち込んで検索すれば、話題のワードなんかが表示される。やっぱりタピオカのタの字もなくて、少しだけ寂しくなった。


「アナタも変な格好をすると思っていたけれど、流行っている服装も変なのね。そんなに肌を出して、よく人前に出られるものだわ」

「うーん、ファッションはねぇ……」

「でも、私では思い付かなかったものばかりだわ。あぁ、身体があれば!」

「残念だね」

「本当よ、私の身体、一体どこをほっつき歩いてるのかしら!」


 首のないボロボロの身体が山の中を歩き回るのを想像して、ホラー映画が見たくなる夜だった。

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