第11話 坂道

お城をぐるりと取り囲む巨大な堀。

城下町から城へと向かう道は長い長い坂道になっています。坂道の終わりには跳ね橋があって、新兵たちが毎日決まった時間に動かしています。

跳ね橋を渡ってお城へ入るのは、貴族、商人、それから奴隷です。重たい鎖を引き摺りながら坂道を登ってきた奴隷たちは、倒れそうになるのを必死で堪えながら城内へと足を踏み入れるのでした。


「うわっ」


 お姫様を抱えて散歩に出たあたしは、コンクリートの裂け目に足を取られてバランスを崩した。自分だけなら何とか踏ん張れたけれど、頭を抱えていてはそうもいかない。転びたくなかったあたしは速攻でお姫様を手放した。


「ちょ、ちょっとォォォォォォォォォォ…………!!」


 ゴロゴロゴロゴロ。立っていたところが坂道だったのが運の尽き。お姫様は勢いよく転がっていく。あたしは追い掛ける気にもならず、おぉ〜なんて間の抜けた声を出してそれを見守った。坂道の終わりがT字路になっていて、壁に当たって止まることは知っていたから、特に心配もしなかった。


 漫画みたいに目を回して地面に転がり、言葉にならないセリフであたしに文句を言うお姫様があまりに面白くて、爆笑してしまう昼下がりだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る