第6話 眠り

お姫様は自分の眠りを妨げられることが大嫌いでした。他国からの来賓が訪れる日でも、婚約者が訪れる日でも、どんなに重要な用件があったとしても、お姫様は気の済むまで眠るのです。

初めは起こそうとしていた家臣たちも、クビだ処刑だと騒ぎ立てるお姫様に全てを諦めたのでした。


「眠りたいわ」

「あぁ、姫さんって寝なくていいんだ」

「寝なくてもいいということと、眠れないということは別物よ! 眠りたい! 好きなだけ眠りたい! あなたズルいじゃない一人だけたくさん眠って!」

「もしかして、それで昨日あんなことしたの」

「そうよ、悪い?」


 昨夜、眠ろうと電気を消してベッドに横たわったあたしの上で、お姫様が何度も何度も飛び跳ねたのだ。

 やめろと腹から下ろしても、部屋中をごろごろ転がり回るものだから全然眠れなかった。


「そんなこと言われても……あたし、たくさん寝ないと活動できないタイプなんだよ」

「私もそうだったのに!」

「アニメ見てていいからさ」

「あら? 何これ、絵が動いてる」


 動画配信サービスに登録してあるタブレットをお姫様の前に立て掛ける。子供向けの可愛らしいキャラクターが冒険するアニメの再生をしてあげた。

 確かシーズン50くらいまで続いている大人気アニメだったはずなので、一日中観ていたとしてもしばらくは持つだろう。

 お姫様が気に入ってくれるかが問題だったが、すぐに夢中になっていた。

 黙っていれば可愛い生首である。

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