第5話 旅
お城には時折、旅の一座がやってきました。
世界各地を巡業している彼らはお姫様にも優しく、気さくで、お姫様が想像もできないような出来事を話して聞かせてくれました。
普段はお気に入りを自分の手元に置いておきたがるお姫様も、彼らだけはそうしませんでした。
彼らが再びお城へやってくるのを心待ちにしながら日々を過ごす、普通の少女のようでした。
「曲芸を見るよりも、話を聞く方が好きだったわ。みんなが綱渡りだったり、猛獣を操るのに夢中になっている間、早く終わらないかと考えていたのは私だけだったでしょうね」
「わぁお」
「でも、きちんとショーはさせてあげたし、最初から最後まで見たのよ?」
「姫さんならショーはやらずにお話を聞かせて、なんて、簡単に実現できるもんね」
「そうよ! だけどみんながショーを楽しみにしているって分かってたから我慢したのよ、この私が! ほら、褒めなさいよ、褒め称えなさい!」
「わぁ〜、姫さんえら〜い」
パチパチパチ。のっぺりとした拍手が部屋に響く。
そんな適当すぎるあたしの拍手でも満足してくれたらしく、鼻息荒くベッドの上で転がっている。
ふと思い立ったあたしは姫さんの頭を持ち上げ、ジャグリングでもするかのようにぽいぽいと放り投げて遊んだ。
「いやぁぁぁぁぁぁ! ちょ、やめ、きゃあああああああ!」
「あはは、あははは、うわ、痛!」
思い切り噛みつかれた。
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