第4話 温室

お城の庭には立派なバラ園があり、その奥には大きな温室がありました。お姫様は時折その温室へ行っては、品種改良中のバラたちを眺めます。

赤いバラなど面白くありません。

お姫様は虹色のバラを求めていました。

虹色のバラに自分の名前を付け、世界中に咲き誇らせるのです。


「結局、虹色のバラは見られなかったわ」

「今の技術でも無理だからねぇ、姫さんの世界ではまず無理だろうね」

「失礼ね! 馬鹿にしないでくださる?」

「魔法でもあれば話は別かもしれないけどさ」

「あら、魔法ならあるわよ」

「姫さんが魔法だって思ってるだけじゃないの? いたいのいたいの飛んでけ〜とか、そういうレベルで」

「えっ、アナタも魔法が使えるの?」

「使えないよ。魔法なんてないからね」

「ふぅん、つまらない世界ね!」

「はは、ホントにね」


 魔法なんてない。そうは言ったものの、目の前でしゃべるお姫様の存在は、もしかしたら魔法の産物なのかもしれない。今のところ、あたしがめちゃくちゃリアルな夢、もしくは幻覚を見ている可能性が非常に高いと思ってはいるのだけど。


 それはそれとして、面白いからまぁいいかと、あたしは一人そうめんをすすった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る