第3話 だんまり

お姫様の暮らすお城にはたくさんの食べ物があり、たくさんの宝石がありました。

お城の中はいつだって絢爛けんらん豪華ごうか

跳ね橋の向こうで民草が必死に助けを求める姿など、お姫様の目に映るはずもありません。

王様宛ての陳情書ちんじょうしょは、庭の片隅で焚き火にくべられます。

多少なりとも理性の残る家臣たちは次々にお城を追い出され、王様はだんまりを続けました。


「姫さんは、なんで山に転がってたの?」

「さぁ? 知らないわ。気付いたらアナタが私を持ち上げていたの」

「アタマとカラダが別々になった時のことは覚えていない?」

「そうね、なんだか怒鳴り声に囲まれていたような気はするけれど、しっかりとした記憶はないわ」

「痛かったろうしね。覚えていないのなら、その方がいいね」

「お父様もお母様も転がっているかしら? ねぇ、ちょっと見てきてくださる?」


 カンカン照りの夏日和。気温もまだまだ上がるらしいと天気予報が告げている。

 あたしは床に寝転んで、だんまりを決め込んだ。


「ちょっと! どうして寝転ぶのよ! 私を拾ったところに行くのよ! こら!」


 ごろごろごろごろ、お姫様は意外とアクティブである。

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