【平成二十五年(2013年)】


【平成二十五年(2013年)四月上旬】


 3月末をもって、福山競馬は史実通りに廃止となった。2011年の荒尾と共に、史実での地方競馬廃止ドミノの最後ということになる。この両場には、ひふみ企画も特に介入はしていない。


 二年前の荒尾競馬場は地方競馬の中でも小規模で、九州地区の三場のうちの中津が先んじて劇的に廃止を決めた後も、単独開催を続けた末の廃止だった。距離の関係もあって、もう一場の佐賀と連携が行われる機運も生じなかったようだ。


 ネット競馬時代を踏まえれば、なんらかの特色を打ち出しさえすれば存続する目もあったかもしれないが、続けるだけが幸福とは限らない。


 今回の福山競馬は、元々がアラブ系専門の競馬場だったこともあって、より厳しい状態に陥っていた。それでも、2005年からサラブレッドの導入、2006年にはコース改修の実施と、わりと改革をしてきたものの、2010年頃から単年度黒字化が存続の条件とされたらしい。2011年は震災の影響で未達のまま継続となったものの、2012年が赤字となって廃止が決まったという状況である。


 福山競馬は、地理的に近い高知競馬場と交流を重ねていたが、ハルウララカの人気沸騰の成功体験を持ち、通年ナイターに切り替えたあちらとは、だいぶ展開が異なってきてしまった。


 それでも、あと一年……、いや、二年待てれば、中央競馬のネット投票の威力が発揮され、存続できていたかもしれない。地方競馬に好感を持つ者からすれば惜しいとの話になるが、収支度外視で廃止すべきと考えていた人たちもいたからには、どちらがいいわけでもない。


 ともあれ、これで地方競馬の廃止ドミノは止まり、生き残った競馬場の復権の道が開かれていく。


 これはなにも競馬に限ったことではない。競艇、競輪、オートレースもネット投票の普及によって危機から脱して、揃って繁栄していく未来に繋がっていく。それを踏まえると、ひふみ企画は地方競馬から競艇、競輪、オートレースの各場のプロモーションに横展開していくべきだろう。


 まあ、その点はこれまでも示唆してきているし、実際には越えられない障壁があるのかもしれない。取り組むかどうかは、現場と経営陣が考えていけばよい。……実際問題、家族との触れ合い優先でそれどころではないのだった。


 美冬とは、これまででは考えられないくらいに対話を重ねている。新たに理解に至ったところもあれば、改めて実感させられたこともある。ただ、幸いにして娘である美春の道を広くしていくためにお互いに力を尽くす、との一点で合意は取れている。


 さて、後事を託すべきは誰なのだろう。まあ、誰か一人である必要はない。多くの人に美春を馴染ませていく作業が必要となりそうだった。




 孝志郎の連れ合いである押原樹里とは、同年齢の気やすさもあって、樹理、智樹と呼び合う関係性になっている。小学校の三人だけの同級生から夫婦が一組誕生し、もう一人の結婚相手も含めた四人で交流しているのだから、わりと稀少な状態だろう。


 樹理の配合理論は難解で、正直なところついていけていない。パズルのように組み合わせていて、しかも既存の繁殖牝馬に合う種牡馬を選ぶだけではなく、次代の配合まで考えてだから、さらに込み入ってくる。


 次世代への配慮をしつつ、生まれてくる馬の資質、すなわち美冬とエスファのお眼鏡にかなう率がはっきりと上向いているのだから、見事と言うしかないだろう。


 そのやりようを見てしまうと、人気血統馬が入らないようにという考えでの、タイプ重視のこれまでの配合は、だいぶ牧歌的なものだったとわかる。ただ、怪我の功名というべきか、樹理の配合理論で先を見据えた場合でも、わりと有望な馬も何頭かいたらしい。逆に、主力の繁殖牝馬のつもりでいたのが、あっさりと即時売却を宣告された肌馬もいたわけだが。


 種牡馬も、特に縛りなく選定されている。地方の馬主さん相手の商売が中心なので、超高額の種牡馬はよほどのことがなければ避けてほしいとリクエストしたのだが、制約がきついと苦笑されてしまった。この後は、多様な血統が入り乱れていくことになりそうだ。


 牧場作りの根幹となる業務なだけに、きっちりと報いるべきなのだが、所要時間の関係もあって、また成果が出ていないからとの本人の意向もあり、報酬額の交渉は難航した。


 実際には、イニシアル社からの給料で満足しているのかもしれないが、それは別の話となる。一方で、税務申告がややこしくなるというのなら、配合検討業務をイニシアル社に仕事として出すのもありなのかもしれない。そうだ、そうしよう。


 遥歌さんは、イニシアルには役員としても株主としても名を出していないが、隠然とした影響力は有している。盛大にかっぱいでもらうとしよう。



 今年生まれた幼駒の有力馬としては、ランカフェリクス産駒で、マチカゼフクキタルの血を継ぐ牡馬が挙げられた。母親は、すっかり基幹繁殖牝馬となっているランカリアライズで、こうなると牝系も伸ばしたいところである。活躍中のランカシュヴァルツだけでなく、有力な娘の誕生も期待したいところだった。


 見所あり判定では、タンホイザーゲート産駒の牡馬と、ハービンガーズ産駒の牝馬が出ている。


 タンホイザーゲートは、2002年生まれで2007年から種牡馬入りしているので、6年目にしてようやく出た期待の牡馬となる。これまでも牝馬のそこそこは出ていたのだけれど、やはり父系継承もしておきたい。


 そのタンホイザーゲート産駒の母親はサクサクギンノスズで、父はシルバーチャーミー、母はランカジョー。ランカジョーとは、2003年に生まれたメルジョージ牝馬となる。


 もう一頭の牝馬の父親のハービンガーズは、2011年に譜代ファームが導入した欧州系の種牡馬で、デインヒルの血を継ぐ者になる。前世知識でも活躍していたはずなので、取り入れていきたいところだった。母親は、サクサクドリブルというランカナデシコとタップダンスシティの取り合わせから生まれたそこそこ評価牝馬である。牝系の強化は、一足跳びにとはなかなかいかないのだった。



 そして、美春の歩行がだいぶ達者になり、散歩に連れ出すとなかなかの機敏さを発揮するため、美冬がだいぶ振り回されていた。もちろん、俺が追走に苦労する局面も多々見られた。


 運動能力の高さは、どちらから引き継いだものだろう? 俺も決して運動音痴の方ではないが、美冬も筋力や心肺能力が低めだっただけで、運動の勘自体はよいようにも思える。並の鉄アレイよりも重い美春を持ち上げて振り回せているわけで、体力も強化されつつあるようでもあった。


 さすがにまだ親娘での会話は成立していないが、視線の動きや、うー、あーといった発声で、一定の意思疎通は取れているような気がする。娘の成長ぶりは頼もしいが、自身の命数の残りを意識させられるのも確かなところだった。



【平成二十五年(2013年)四月二十八日】


 キングオブクールは天皇賞・春の連覇を大目標に定め、レース当日を迎えていた。それを成し遂げた後は、再び海外遠征に向かうのが本線となるが、中央の中距離路線を選択する手もあり、悩みどころとなる。


 この年の中距離とクラシックディスタンスのGI戦線は、前世のままならジェントルレディ、ゴールデンシップと、前年に続いて凱旋門賞制覇を狙うオルフェーヴルリといったところの争いとなる。そこに割って入って勝てればよいのだが、惨敗が続いてしまうようだと……。


 まあ、天皇賞の後の様子を見てから考えようというのが、陣営としての結論だった。


 そして、上田競馬の朱雀野厩舎所属のランカシュヴァルツが、嵐山騎手が導く形で阪神大賞典で二着となって出走権を確保し、再びの対決が行われることになった。さすがに分が悪いだろうが、一定の話題を集めていた。


 前年に続いて、今回も家族三人で淀を訪れている。美春は既に立ち歩くようになっていて、意味をなさない音声を発している。京都の競馬場が、三人の思い出の場所ということになっていきそうだった。


 前年をなぞる形での動きとなっただけに、やや動きに余裕がある。戦いに向かうキングオブクールを見送って、応援態勢を整えた。




 本来ならデフェノーミノが優勝するはずのレースであるが、キングオブクールは安定したレースぶりで、先頭に立って最後の坂を駆け下りた。


 ランカシュヴァルツは、後方から押し上げて追い込みの構えを取っている。これが二度目の芝レースとなるわけだが、前走の阪神大賞典で見せた末脚は鋭いものだった。


 直線を向いたときの両馬の差は、ざっと二十馬身である。キングオブクールがペースを速めなければ、射程圏内といったところだろうか。


「あれ、追いついちゃう?」


 美冬が意外そうな声を上げると、俺の腕の中にいる美春が「だー」と同調した。


「まだ追ってない……けど、どうしてだろうな」


 中段後方から猛追しているランカシュヴァルツだけが相手なら、ゴール前で軽く追うだけでも先行できるだろう。けれど、その前にも脚色のよい馬はいる。


「まさか……、故障?」


 菊花賞のゴール後に見せていた痛々しい姿が思い出される。巧は明らかに追っていない。一方で、止めてもいないのは、急制動を避けたがっているのか。


「追わないと制裁されちゃうかもしれないのに」


 確かに、しっかり追わずに敗れた場合、制裁ももちろんだが、賭けられている金銭が多額なだけに、大騒ぎとなりかねない。


「あいつに、自分の保身のために馬を危険に晒すなんて、できるはずがないな。乗っているのがGIでも未勝利戦でも」


 本来なら美徳のはずだが、公営競技の駒としては果たすべき役割があるのもまた事実なのである。


「止めるべきなんだろうな。あるいは、はっきりと外に出すか」


「でも、それも危険よね」


 追わずに勝てるなら、それが一番だ。何事もなかった場合、なんらかの制裁は受けるかもしれないが、それだけで済む。けれど、このまま他の馬に抜き去られたなら……。明確な故障が発見されれば別だが、何事もなかった場合には、単なる制裁では済まないかもしれない。


「無事に勝ってくれるように祈るしかないな。巧のためにも」


 キングオブクールはゴーサインが出ないことに戸惑っているのだろうか。それでも、ペースを落とすことなく一完歩ずつゴールに近づいている。


 大外から猛襲してきたのはゴールデンシップではなく、まさかのランカシュヴァルツだった。大歓声が上がるが、今の俺らにとっては、胸が痛い状態である。


「嵐山先輩、頼むからがんばり過ぎないで」


 悲鳴のような美冬の声に、俺も応じる。


「そうそう、二着でいいんです。蓮舫さん、ごめんなさい。競馬では二番じゃダメなんです、なんて断言しちゃって。この場合は、ぜひ二着でっ」


 各方面に失礼な祈りを捧げているが、ランカシュヴァルツに脚を緩める様子はもちろんない。千載一遇の好機に全力で追わなければ、むしろ騎手失格である。


 内外離れた入線はほぼ同時に見えたが、角度の関係もあって定かではない。


「キングに故障なしでシュヴァルツ二着、キングに故障なしでシュヴァルツ二着……」


 美冬の念仏のような呟きが聞こえてくる中で、俺の視線はターフビジョンに釘付けになっていた。


 ゴールの先の数十メートル付近で下馬して手綱をつかんでいる巧に、嵐山先輩が操るランカシュヴァルツが近づいて、なにごとか声をかけている。


 彼女が下馬すると、シュヴァルツがキングオブクールに寄り添っている。本来は、後検量前に騎手が交流するのはいい状態ではないのだが、ざわめきの中で大写しにされる二人と二頭に、そんな思考は欠片ほどもなさそうだった。




 長い長い写真判定の結果、掲示板の一着欄にキングオブクールの馬番の5が、着差欄には「ハナ」の文字が表示された。少なくとも巧の危機が回避されたことに、俺は胸をなで下ろしたのだった。


 キングオブクールは繋靭帯炎を発症していて、引き運動の時点で歩様が明らかに乱れていたことから、高瀬巧騎手の騎乗については、戒告が行われたのみで事実上のお咎めなしとなった。


 表彰式は主役抜きで行われて、連覇を記念する天皇賞春の口取り写真は夢と消えた。まあ、それもまた貴重なわけだが。


 命に支障はないものの、再起にはだいぶ時間がかかるとの診断で、キングオブクールはこのまま引退すると決まった。春の天皇賞を連覇し、海外を含めたGI4勝というのは充分過ぎるほどの成果である。来年以降の種牡馬としての活躍にも期待するとしよう。


 一方のランカシュヴァルツも、目いっぱいの仕上げで鬼脚を使ったために、だいぶ負担がかかったようで、しばらく休養するとの話になっていた。



【平成二十五年(2013年)秋】


 キングオブクールの天皇賞後の海外遠征は、本決まりだったわけではないが、事前準備が進んでいたのも確かだった。


 もろもろキャンセルするより、代わりの馬を送り込もうとの話になり、選定されたのは上田競馬の朱雀野厩舎所属のランカファントムだった。メイユウオペラ産駒で、母の父にライブラマウントが配された、新体制爛柯牧場におけるダート方面の初期方針の結露と言うべき存在のはずなのだが、底抜けのスタミナを保持しているという異色の存在で、上田の長距離戦で勝ち星を積み重ねていた。


 それだけに、芝をこなしてくれれば、海外の長距離戦でもいけるかも、という淡い期待だったのだが、カップ三冠と呼ばれる長距離戦三連戦で、GIゴールドカップを3着、GⅡグッドウッドカップを2着、GⅡドンカスターカップを制覇という望外の成績を残してくれた。


 ただ、ドンカスターカップを勝利した後で故障を発生してしまって、このまま引退となりそうである。芝がこなせるとわかっていたら、中央の長距離路線を試してみてもよかったのだが……。


 やはり、気軽に芝の適性を測れると、いろいろと広がりそうに思える。芝コースを設置するとなると元手と維持費がいるだけに、なかなか難しい話ではあるのだが。




 この夏の終りには、カイトウテイオーが世を去っている。思い返せば、美冬と出会ったごく初期に、カイトウテイオーとメグロマックイーンの格としての優劣について話したものだった。


 結論は、長距離ならマックイーンが優位で、テイオーがはまったときの爆発力はすごいけれども安定性に欠ける、というものだった。種牡馬としては、前世の記憶ではどちらもサンデーサイレント系全盛の環境下で後継を残せずに終わった。


 今生では、このままキングオブクールが無事に種牡馬入りすれば、メグロマックイーンの血脈は残っていく流れとなりそうだ。


 一方のカイトウテイオーも、どうやら後継馬が生まれてくれたと思われる。エスファによって有望認定を受けたランカカエサルは、たとえこのまま未出走に終わっても、種牡馬入りさせることになるだろう。


 入厩先は、中央の仁科厩舎を選択した。今回も導入教育は上田競馬の朱雀野厩舎で行われることになっており、馬運車に載せられての出立の時を迎えていた。


 若番頭から若が取れつつある隆は、来年の三冠馬の門出だな、なんてスタッフらと冗談を言い合っていた。その冗談が現実になってくれていたらよかったのだが。




 一報が入ってから、詳細が明らかになるまでにはしばらくの時間を要した。ランカカエサルを載せた馬運車が事故に巻き込まれたのだった。対抗車線で煽り運転から派生したカーチェイスめいた事象が発生し、避けようとした家族連れの車がハンドル操作を誤り、衝突を回避しようとハンドルを切ったことで、路肩に乗り上げつつ電柱にぶつかって、横転したという流れだったらしい。


 最初の連絡があってから程なくして現地に急行したのは、俺と美冬、それに隆だった。美冬には娘を見ていてくれるようにと頼んだのだが、頑として拒否されてしまった。留守中の美春は女性スタッフ陣に、牧場についてはご意見番役の健司さんに託された。


 到着すると、燃え焦げた車が運び出され、交通規制が解除されようとしていた。その間の事情は、電話とチャットで把握済みである。


 家族連れの車を運転していた若い父親が、ひどく沈んだ表情で詫びに来たが、家族へのケアを優先してほしいと拝み倒すように説得して帰らせる。過失がどうのという話はあるのかもしれないが、家族を守ろうとした人間になにかを負担させるとかはありえない。むしろ、こちらからもケアしていくとしよう。


 より深刻なのは、馬運車のドライバーさんだった。運んでいた馬にかかっていた期待の高さは、隆の冗談もあって把握されていたようだ。それどころか、号泣して詫びていた中での言葉からすると、現役時代のテイオーの熱烈なファンだったらしい。強い自責の念にかられているようだが、対抗車線から車が飛び出してきてはどうにもなるまい。


 こちらも厳密に過失を算定すれば、もしかしたらゼロではないのかもしれないが、そこを問責するつもりにはやはりなれない。自家所有でなければ、馬主サイドとの調整に苦慮していたかもしれないが。


 急行してくれた獣医の診断を待つまでもなく、馬運車の中で横たわって、苦しげな声を発しているカエサルに生き延びる途は残されていなかった。美冬が撫でると、少し安心したように一声発し、目が閉じられたところで処置が行われた。父親の後を追うように、帝位を継ぐべき存在が天上へと旅立ってしまった。


 それに比べたら本当にどうでもいいことではあるが、一連の事故の原因になった煽り運転をしたドライバーは、同乗者と共に車中で焼死したらしい。カエサル以外の死者はその二人に留まったようだ。


 一方で、家族連れの車に同乗していた奥さんと娘さんが軽傷で済んだらしいのはなによりだった。


 馬運会社の担当者が到着して詫びを入れてきたが、こちらより従業員を気遣ってくれと求めておいた。今は放心しているドライバーさんには、美冬が寄り添って手を握りしめている。そういうところは、本当に尊敬してしまう。


 もしも肉体的、精神的に後遺症が残るようなら、介入させてもらうとしよう。彼らもまた、牧場運営において重要な位置付けを担うスタッフである。これまで気が回っていなかったが、手厚く遇するようにしなくては。


 しかし……。正直痛い。輝くような可能性を秘めた幼駒を失ったのもつらいが、実力を伴うカイトウテイオーの後継者が失われてしまった。



 カイトウテイオーは、本来なら爛柯牧場で重視してきた長距離馬ではないだろう。クラシックもこなせる中距離馬、といったところだろうか。ただ、カエサルという希望に触れてしまった以上、継承できるのならしたいのも確かだった。


 テイオー産駒でのこれまでの活躍馬としては、米国遠征でGⅢを制覇したランカエカテリーナがいるが、牝馬では父系の継承はできない。


 現状で最も活躍している息子は6歳で現役続行中のルンルンナイトで、引退後は種牡馬候補としたいとの馬主サイドへの打診は、諸手を上げて歓迎された。


 これまでの実績としては、上田三冠のうちの皐月賞相当の真田昌幸賞、ダービー相当の真田幸村賞を制覇し、上田&北関東限定の重賞を幾つかと、交流GⅢを一つというところで、一線級かと言われれば、否定せざるを得ない。


 まあ、来春に亡きランカカエサルの全弟として産まれてくる幼駒が、同様の能力を持っている可能性もある。そこに期待するとしよう。


 ここまで、長距離芝向けで後継種牡馬を自前で確保方向なのは、パーソロン系となるメグロマックイーン、ファイントップ系のソッカーボーイ、ニジンスキー系のウルトラクリークに、フラッシンググルーム系のマチカゼフクキタルといった面々となる。ロベルト系のリアルフダイは、残念ながら爛柯牧場においては途切れてしまっていた。


 中距離では、ルンルンナイトでキープ状態のカイトウテイオーと、タンホイザーゲートでのマチカゼタンホイザ経由のノーザントーストの血脈保全までとなった。


 具体的には……、


 メグロマックイーンの後継種牡馬候補は、代表馬となっているキングオブクール。


 ソッカーボーイの子としては、まだ現役ながらランカヤタガラス。


 ウルトラクリークからは、新生爛柯牧場の初代善戦マン的な存在となったウルティマクリーク。


 マチカゼフクキタルの子では、ランカフェリクス。


 マチカゼタンホイザの子では、タンホイザーゲートが種牡馬としても安定感を示していて、よその牧場からの引き合いもちらほら入るようになってきていた。


 爛柯牧場では、美冬とエスファによる幼駒時点での選別が可能なため、攻めた配合ができるのも確かなところとなる。これに、樹理の配合理論が加わって、さらに加速してくれるとよいのだけれど。


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