【平成二十一年(2009年)】
【平成二十一年(2009年)春】
今年は、前世の記憶通りに進めば、春競馬の総決算の宝塚記念と、年末の有馬記念のグランプリ連覇を、ドリームトラベルが果たすことになる。ステディゴールドとメグロマックイーン牝馬による、いわゆるステマ配合だが、史実通りでも最初の活躍例なので、まだ話題になる段階ではない。
記憶の中の世界では、この二年後にオルフェーヴルリが三冠馬となり、そこから注目されていくはずだ。続くゴールデンシップでさらに補強されることになる。
その頃には、マックイーン牝馬は繁殖牝馬からも引退していた場合が多くて、乗馬から復帰して種付けされる例まであったと聞く。
やや枠外的にマックイーン牝馬を確保してきたのは、正直なところ、そのステマ人気に乗るためもあった。そうは言いながらもタイミングを見てきたのだが、今年からステディゴールドの種付けを進めている。先々への生産方針と関わるものではないし、気性難が多発する配合のため走るとの確証もない。これは単純に、セリに出して利益を得るためとなる。
この馬たちが好成績を残して繁殖入りするようだと、サンデーサイレント系の絡んだ長距離血統が増えていくことになる。血の飽和対策としては微妙さもある流れだが、中央競馬の長距離路線が廃れてしまってはそもそも意味がなくなる。
また、長距離に寄ったサンデーサイレント系を確保したいのも確かなところではある。ステマ配合で傑物が出ればそれもよし、そうでなければ、ダンスインザナイトあたりに手を出していくのもありだろう。
サンデーサイレント産駒も多くが種牡馬入りしているため、後継者を残せる馬ばかりではなくなってくる。特に長距離産駒が多いダンスインザナイトなどは、有力な後継種牡馬に恵まれなかったはずだ。
やや不純な欲得が絡んだステマ配合濫造だけでなく、本筋となる生産はもちろん続けている。
長距離系でのエスファ判定は、まあまあレベルまでに留まっていて、それでも期待はできるのだが、なかなか大物は現れないものである。こちらは、まずはマックイーンの忘れ形見に期待するとしよう。
ダート方面で、エスファによって期待馬認定が出されたのは二頭である。ファイトエンブレムとランカヤマブキの仔となる牝馬は、体躯的には今のところダート向きと推察されている。
もう一頭は、シルバーチャーミーとランカリアライズの取り合わせから生まれた牝馬で、芝ダート両用そうとのことだった。
芝とダートの向き不向きは、走らせてみないとわからない面もあるのだが、春待先輩の感覚がわりと当たるので、頼りにさせてもらっている。馬体と歩様からなんとなく感じるもので、言語化は難しいそうだ。
ただ、できればどこかに芝コースを確保して、能力試験のように走らせて判定したいところではある。上田への芝直線コース設置は、本命の案を通すための大げさな計画だったが、収支状況によっては考えてもいいのかもしれない。
さて、ダートの一線級に近いレベルの馬が出現したとなると、いろいろと考えるべきことは出てくる。中央か、南関東か、はたまた上田かその他の地方か。気は早いが、ザクくんと仁科先生と相談していくとしよう。
この頃の中央競馬では、3歳ダート路線はほぼ存在せず、牝馬限定路線に至っては絶無状態である。中央入りして新馬、未勝利、五百万下と進むよりも、まずは地方に入厩してご当地三冠でも走っておいて、夏以降に中央入りするという選択肢もあるのだった。
現状の関東では、大井、船橋、川崎、浦和の南関東四場が、馬のレベル的にも賞金面でも、準中央といった位置づけに捉えられる状態にある。このまま上田と高崎、宇都宮の三場が残れば、マイナーリーグ的な役割を担えそうだ。
ダート馬とされていても、明らかにダート専門というわけでなければ、中央入りして芝を試してみたくなる気持ちはわかる。
中央競馬における芝馬にとっての世界と、ダート馬のそれとでは、広がりが劇的に違う。生涯を通してでもそうなのだが、特に三歳の夏までは愕然とするほどの違いがある。
具体的に見比べると……、芝の3歳春シーズンのGIはこの2009年で、皐月賞、NHKマイルC、ダービーに加え、牝馬限定で桜花賞、オークスがある。
上半期でGⅡは牝馬限定2レースを含めて5つ、GⅢは牝馬限定4レース含めて11を数える。
対して、ダートの3歳限定重賞はGⅢユニコーンステークスの1レースだけ。8月下旬に後にGⅢとなるレパードステークスが新設されてはいるが……。牝馬限定戦に至ってはゼロである。
芝の3歳上半期の重賞は21レース。対して、ダートは1レース。それもマイル戦のみなのだから、誰もが芝を目指すのは無理もないところとなる。そして、駄目で元々モードで芝を試すには、中央入りするしかないのだった。
地方の芝は……。盛岡に設置されているのだが、多用されているわけではない状態にある。上田競馬場の拡張案をまとめたときの初期絵図には、1200mの芝コースが描かれていた。美冬が俺の図の雑さを見かねて清書してくれたのが、懐かしく思い出される。
上田競馬場は、ダート1400mの周回コースに直線700mが接続され、9の字状になる計画が進んでいる。
内側に芝では狭くなってつらいと考えると、ダートの追加直線の脇に設置するしかなさそうだ。そこから無理やり周回コースにするためには、9の字を包み込む感じだろうか。……縦長の0字状にするとしたら、3000m級の長大なコースとなる。いくら夢物語にしても、残念ながら現実性のかけらもなくなってしまった。
そこまでの規模ではなくても、多額になるだろう維持費に目を瞑って、走法が確認できる程度の芝コースを設置する、という考え方はありうる。まあ、上田競馬組合が大儲け状態になったら検討項目に挙げてみようか。
現役馬の動向に目を移すと、メイユウオペラのラストクロップということになる3歳馬のランカファントムが上田でデビューを果たしている。ただ、長ければ長いほどいいタイプらしく、夏以降の古馬混合長距離路線が本番となりそうだ。
同じく上田でのデビューを選んだカイトウテイオー産駒のランカエカテリーナは、上田の牝馬三冠路線に加えて遠征を重ねる予定とされている。彼女が中央入りしていたら、ユニコーンステークスに出走できていただろうか? 晩夏に新設されるレパードステークスは、後にドバイでも活躍するトランセンディングが出てくると思われるだけに、ちょっと相手が悪そうではある。
カイトウテイオー産駒で、そのひとつ下のそこそこ評価の牡馬は、ルンルンナイトとしてデビューに向けて調教が積まれている。母親がルンルンオペレッタだとの縁もあって、ルンルンの馬主さんに買ってもらいつつ、上田競馬への入厩をお願いした状態だった。三冠馬のシンボルルドルフの孫で、幻の三冠馬的な呼ばれ方をしたカイトウテイオーの息子だけに、できれば上田三冠を制してほしいとの思惑もあった。
ナイトという名付けは、ご意見番役を介した対話の中で、テイオーを名乗るほどの器ではないという話の中で、じゃあ男爵でバロンくらいかねえ、いや、男爵もちょっと荷が重いかも……、といった流れでそこに落ち着いたのだった。
マチカゼフクキタル産駒の牡馬のランカフェリクスも、ルンルンナイトと同じく二歳シーズンとなり、中央の仁科厩舎入りが予定されている。今のところ、意外と仕上がりが早そうとのことだった。芝馬は中央入厩以外の選択肢がないので、ある意味でシンプルである。
種付け方針は、ダートのプラチナアリュールの種付け料が300万とはなったものの、普通に種付けできる状態になったため、爛柯牧場主導でまたつけ始めている。
長距離は、馬主さんの元で競争生活を終えた牝馬が繁殖入りして来ていて、新たな取り合わせでの生産が進められていた。マックイーン牝馬は、見所のある馬以外は来年ステディゴールドをつけて売りに出す感じを想定している。
上田競馬場における真田をテーマにしたイベントは、真田祭りと区別するために真田騎馬武者祭と銘打たれている。今回は、上田での競馬開催がない祝日の開催で、中央競馬、高崎競馬の場外発売日となっている。
真田の斬り込み隊長である真田幸村……、史実では信繁だが、それはそれとして、幸村を嵐山騎手が演じている。当初はイヤがるそぶりを見せていたヤマアラシ先輩だったが、春待先輩がはるばる北海道からやって来て出演する見込みだと聞かされると、覚悟を固めたようだ。
春待先輩が真田信幸となり、ことねんこと三浦琴音嬢が真田昌幸で、真田幸隆はザクくん……、朱雀野調教師が演じることになった。後の二人も、それぞれの弱味を衝かせてもらっての出演となっている。
他の騎馬武者も、厩務員や牧場関係者らの乗れる人材が集まっている。俺も一兵卒として参加するつもりだったのだが、全般を把握しろと遥歌さんに叱られてしまった。まあ、正しいよな。
ただ、赤備えの軽量鎧を確保できたのは武将の分だけで、他は和服に段ボール製の肩当て、胸当てくらいとなっている。把握が早ければ、爛柯牧場サイドでどうにかできたかもしれないが、どうやら競馬組合として身の丈に合った装備にしたかったようだ。
初回の騎馬行進が済んだところで、詰め寄ってきた騎馬武者は赤備えの真田幸村だった。
「騙したわね」
「何のことだろうか」
「春待先輩が、わたしが参加するなら心強いって言ってたって? 春待先輩には、逆のことを伝えてたって言うじゃない」
追い付いてきた春待先輩も、いつにない不信感を瞳に浮かべている。
「両者の心情を正しく描写したってことだよな」
「どちらの応諾もない時点で両者にそう伝えるのは、時系列がおかしいんじゃないかって言ってるのっ」
「真田騎馬隊としてきょうだい役を二人で務める機会なんて、そうはないと思うぞ。演者を呼べるなら、そちらが優先だろうし。……楽しめなかったのなら、悪かったが」
「それは……、でも、そういうことじゃなくって」
「じゃあ、埋め合わせに屋台の食べ物をなんでもおごるからさあ」
「おのれ、ダイエット中の女真田幸村に向かってなんたる狼藉をっ。そこに直れ、叩っ斬ってやる」
「うわー、やられるー」
棒読み口調の俺を斬り捨てたところで、ヤマアラシ先輩が声を落とした。
「でも、屋台の食べ物のレベルが低くない? 食事制限の分だけ、質に敏感になっているきらいがあるにしても」
「だよなあ……。うちの高校の学園祭と比べちゃ駄目なんだろうけど、明らかになあ」
そこで、近づいてきた一群から声がかかった。
「にぎやかですね」
俺は外面モードで即応する。
「なかなかの入りで安堵しています」
近づいてきたのは、上田市長と長野県知事だった。長野県政はよっしーとのあだ名を持つ前知事時代、脱ダム宣言や記者クラブ廃止にガラス張り知事室などで大きな話題となっていたが、そのよっしーを打倒して就任したのがこの場にいる現知事で、県政の刷新を宣言していた。
騎馬武者二人は、軽いあいさつだけして、次の演目があるからと去っていった。まあ、逃げるのが無難だろう。俺も、やや逃げ出したい心持ちとなっている。
それを察してか、上田の市長、椎野氏が笑顔で問いを投げてきた。
「今回の状況をどう判断していますか?」
「赤備えの騎馬隊は素晴らしいですね。鎧は揃えたいところですが、武将級は自在に馬を操っていますし、外に出せば大歓迎されるレベルでしょう」
ことねんこと三浦琴音嬢の騎乗ぶりも見事なものだった。リポーターとしての言動にも、競馬知識と馬への明らかな愛情が染み出している。当初の競馬事業の否定は、あくまでも上場による利益の最大化を目指してのもので、競馬自体には好感を持っていたようだ。
「赤備えは、という表現は、限定の意味合いが強い感じですかな」
「そうですね、屋台の食事は……。けれど、まあ……」
「なんでも言ってください。今回の知見を次に活かす必要があります」
「では遠慮なく。小学校のバザーや、ぎりぎり中学の文化祭の模擬店ならあれでよいですが、上田や北関東でのリピーター獲得の観点だけでも、合格点にはとても届かないでしょう。南関東の競馬場や、中央競馬にイベントとして打って出るためのトライアルとしては、非常に残念なレベルです。長野の産品をアピールするのならば、本気でやってほしいですね」
「中学の模擬店レベルとは、手厳しいですな」
「ふむ……。今回は、県の予算も入っていて、自由度が低下している面があるのは確かです。ひふみ企画さんに頼めなかった部分も多いのですが」
「誤解のないようにお伝えしておきますが、総てをひふみ企画に任せろなどと言うつもりはありません。ひふみ企画担当分も、合格点にはほど遠いです。リアルイベントに慣れていないとはいえ、締め上げないと」
「そうですか……。この素朴さがよいと、イベント会社は申しておりましたが」
若造に対しているのに、知事の物腰は柔らかい。おかげで、こちらも落ち着いた口調で意図を伝えることができていた。
「素朴さと拙さは別物だと考えています。みすず飴は素朴でしょうが、拙さはありません」
「なんと……、銘店レベルを求めますか」
「それ以上を、ぜひ。食事だけでももう一度来ようと思わせる店を揃えたいところです。長野の産品の価値を高め、人を呼び込む。それが目標のはずです」
「検討しましょう」
県知事がスタッフと話し込み始めたのを見て、俺は椎野市長に小声で問い掛けた。
「いろは系に頼みましょうか。競馬場のカフェだけでなく、市中で飲食店を手掛けていますが、出自が出自だけに、屋台のノウハウもあるはずです」
「ただなあ……」
「資本的にも、人的交流も完全に途絶えていると聞いています。料理は絶品です」
「わかりました。進めてください。万一の時は、私が責任を取ります」
「承知しました」
これで失敗できなくなったわけだが、いつものことでもある。
【平成二十一年(2009年)夏】
七月に政権交代が発生した。崩壊後には色々と欠点が挙げられた民主党政権だが、この時点では自民党政治が永遠に続きかねない状況へ拒絶の意を突きつけた感じだろうか。
これに先立つ時期には、二大政党制が正しいことのように考えられていたが、結果としてそうはならなかったのが前世の流れとなる。競馬でそこそこの動きをしているのに、GIの結果が変わってこないからには、俺の動きが政治の潮流を変えるとは思えない。まあ、それこそバタフライ効果的な影響なら、あり得なくもないけれど。
上田を舞台にしたアニメ映画、「サマーウォーズ」の公開が迫っている。
それに先立って、ひふみ企画のしかけで、細田監督の前作である「時をかける少女」の上映会が、七月の毎金曜夜に上田競馬場で開催された。
この上映会では、葡萄のナガノパープルの紹介イベントを併催している。ナガノパープルそのものの試食会に、果実をたっぷりと使用したシェーキとソフトクリームの屋台は大人気となった。それに加えて、今回は高崎と宇都宮の名物も供される形となった。
ソースかつ丼、玉こんにゃくと宇都宮餃子が屋台で供され、信州牛、上州牛、とちぎ和牛の串焼き食べ比べセットに、信州そばと水沢うどんの食べ比べセットも販売された。スイーツ屋台も、ナガノパープルとかぶらないジャンルで出店されている。
最終週を覗きに行くと、話に聞いていたとおりに盛況となっていた。各所の様子を見ていると、声をかけてきたのは上田市長だった。
「にぎやかなイベントとなりましたね」
「はい、本気を見せてもらいました」
俺の心からの言葉に、椎野氏の頬が緩んだ。
「市民のうれしげな笑顔はいいものです。……それにしても、競馬をやっていない競馬場に、こんなに人が集まるとは」
薄暮開催をしている高崎競馬の場外発売は限定された投票所でのみ売られており、競馬場中央のビジョン、場内のモニターは総て映画が映し出されている。その物珍しさが、リピーターを呼んでいるようでもあった。
さらに、後に日本三大イルミネーションに数えられるあしかがフラワーパークの協力を得る形で、入場ゲート近くの遊歩道にイルミネーションが設置され、そちらにも感嘆の声が上がっていた。あしかがフラワーパークを訪れるきっかけとしてもらって、共存共栄といきたいものだ。
「今回は特殊なケースだと考えていましたが、夏休みイベントとして映画上映会はありかもしれません」
「料理の威力も感じました」
「常設の店舗入れ替えの話は、見直しをして進んでいると聞いています。既存の店舗でもいいものは残し、整備していく形になるでしょう」
「そうなれば、週末の中央競馬目当てのお客さんの満足度も高まりましょう。……ネット投票を全国から集めつつ、リアルでは地元民や観光客を呼べるイベント会場として。そんな流れになるかもしれません。ただ、競馬場でできることは限られます」
「確かに。宿泊施設や飲食店、商店のインバウンド対応も考えなくては。……直線コースとナイター設備の着工が、間もなく正式決定する運びとなります」
「それはなによりです」
「2010年度の番組編成には、新距離を反映させることになるでしょう」
「ダートの直線1000メートルは、新潟競馬場とはまた違った壮観となってくれると思います」
そして、三冠や古馬中距離に2000メートルが設定されるのは今後も踏まえると大きそうだ。この改修を十年前にできていればという気はするが、累積赤字が積み上がる状態では難しかったのも確かである。
いずれにしても、これで反転攻勢への準備は整う形となった。
今年クラシックシーズンを迎えたカイトウテイオー産駒のランカエカテリーナは、上田競馬の梅姫賞、桜姫賞、桃姫賞の、上田牝馬三冠を制覇した。地方重賞ではあるにしても、三冠馬から三冠馬という話になって、だいぶ盛り上がったようだ。
夏は休養に充てているが、秋からは交流競走に打って出るというから楽しみである。
上田の牡牝三冠は、上田・高崎・宇都宮所属馬限定となっている。それだけに、爛柯牧場の馬が席捲する場合も多い。開放しようかとの話もあるのだが……。それなら、別枠組みで作った方がよいだろうか。
中央がダートを軽視していて、南関東は独自路線を進んでいるからには、交流三冠を作ってしまうのもありなのかもしれない。まあ、賞金を確保する必要があるので、簡単ではないのだけれど。
【平成二十一年(2009年)冬】
スーパーコンピューターに関する政治家の、二位じゃダメなんですか、との発言が今生でも話題になったが、こと競馬に関しては、優勝と2着の間にはそそり立つ壁が存在する。
春以降のデビューを計画しているメグロマックイーン産駒、キングオブクールにはぜひ春の天皇賞を制覇してもらって、四代制覇を成し遂げてもらいたい。二位ではダメなのである。
天皇賞春は再来年の話で、来年は出走権が得られるだけの賞金の確保と、あわよくば菊花賞をというのが目標となる。
ジャパンカップはヴォートカが制覇した。前世でも感心していたとおりに強い馬だが、鼻出血で引退する方向らしい。
しかし、ダービーを制覇し、ここまでGI7勝なのだから名牝である。ドバイ遠征は二年連続で優勝できなかったが、それでも大活躍なのは間違いない。
爛柯牧場の期待の持てる馬は二頭いる。まずは、年が明ければクラシックシーズンを迎える、マチカゼフクキタルとランカナデシコの子である牡馬のランカフェリクスである。
もう一頭は、ひとつ下のソッカーボーイ産駒の牡馬、ランカヤタガラスだった。母親は、リアルフダイ産駒のランカトゥルーとなる。
世代は違うが、どちらも長距離向けであるとすると、キングオブクールと同様のコースを目指すことになるだろう。
3歳牝馬のランカエカテリーナは、大井でのTCKディスタフと浦和記念の交流重賞を連勝し、次走は上田競馬場での年内締め括り競争の一つ、諏訪姫賞が予定されている。
来年には、海外遠征の打診がかかったというからびっくりである。なんでも、UAEのドバイワールドカップの前哨戦的なレースに、ルージュデザイアが出走を予定していて、同行馬を探して仁科先生に打診があり、そこからの紹介らしい。このルージュデザイアは、今年の秋華賞を制覇し、続くジャパンカップで3着に入った馬である。
この遠征には、ジャパンカップを制したヴォートカが一緒に行っていたような気がするのだが、俺の介入で変わってしまったのかもしれない。実行となれば、是非にという話はしてある。もっとも、出走するのは軽いレースにしてほしいものだが。
この年の流行歌は、前年に続いて嵐が上位を独占する形となっていた。その他のジャニーズのグループも大活躍である。
一方で、数年前から活動していたAKB48が話題になるようになってもきていた。芸能界に疎い俺ではあるが、全盛期の歌はさすがに聞いたことがあるはずで、まだ助走期間といったところか。
どれだけ人気でも、48人で分け合っては個々の実入りは少なくなるのではと、他人事ながら心配してしまうが、平成の終わりまで解散したとの話は聞かなかったように思うので、きっと生き残っていたのだろう。ということは、心配する必要のない状態だったわけか。
そのまま、令和が終わる頃まで存続するのだろうか? エヴァンゲリオンの完結とAKBの解散はどちらが先なのだろう。俺には見届けられないことだが、なにかを見通せるとしたら別のことを知りたいのも正直なところだった。
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