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「改めて、secretについてだったかな?」
にっ、と屈託のない笑顔を浮かべたセナはテーブルの上に仁王立ちして高らかと宣言した。
「secretはお店兼私達のギルドの名前!通称黒衣の運び屋、配達が専門よ」
わりと予想外過ぎた返答に首を傾げた。確かに3人とも黒っぽい服を着ているから黒衣は納得だ。けど、運び屋とはどういうことだろう。
「それは先程のクリストファーの依頼の範疇なのか?」
「キミがさっきの説明を聞いて何を依頼だと思ったのかは知らないけれど、アタシ達にうってつけの依頼だったわ。実際のところ完璧に遂行してたもの、アナタが現れるまでは」
ポンッと肩に手を置かれて変な汗が吹き出した。先程まで優しかったハズのアニーさんの声は冷水のように冷たいしライムは相変わらず氷のような視線をコチラに向けている。唯一セナさんだけが柔らかな表情のまま俺を見る。
「クリストファーの依頼は3つ。彼の終焉の時にユシヤ村の人間を一人も死なせないこと、クリストファーの遺体から聖遺物というものを回収し村にいる男に渡すこと、そして次の犠牲者を出さない……つまりは神の印を誰にも刻ませないこと、なんだけど」
俺があそこにいたから神の印とやらが俺に刻まれてしまったということか。考えるより先に、すまん!と頭を下げた。
「すまんで済めば防衛隊はいらん」
「コラ、喧嘩しないの」
目の前でみにょーんと、伸びたライムの頬。思わず吹き出すとムキになったライムが俺の頬をつまんで力任せに引っ張り上げた。
「オイ!力加減しろよ!!」
「きっとしてるわヨ。本気だったらナイフを抜くもの」
どんな物騒なガキですか!?と叫ぶと笑い出したアニーさん。逆にライムの力は余計に増している。
「……痛いって言ってんだろうが!!」
頭から水を被り一瞬で冷静になった。先程まで笑顔だったセナさんの顔に怒りが浮かんでいる。喧嘩を売ってきたライムも察したようで、手を離して黙り込んだ。
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