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「今回の依頼主はクリストファーという青年だったの。クリスは、えっと」
「セナ。おれが話す」
「……お願い」
ライムと呼ばれた少年は、セナの方を見て頷くと今度はコウタへと視線を移動させた。その視線は先程までの炎の熱さを忘れるほどに冷たい。
「クリストファーは神の印を刻まれた正真正銘ユシヤ村の村長だ」
かつて、クリスは決して信心深くはない青年だった。前に終わりの炎が現れた時、炎に帰結せよと唱える母親により無理やり炎の中に飛び込ませられたところ神の印を刻まれて生き延びた。そして、目の前で母親が炎に包まれ死んでいった。
彼は神は信奉してなかったけど村長としての才は十分過ぎるほどあった。元々物覚えが良かったため、村民の好きな事嫌いな事やりたい事なりたいもの。その全てを記憶していた。
また聡明であったため、炎信仰をはじめとした炎神の伝承についても調べ尽くし己の身に終わりが訪れる時すらも理解したそうだ。
「それでおれたちsecretに声がかかった」
未だ鋭い眼光でコウタを見据えるライムは、ドカッと勢いよく椅子に腰掛けた。腕を組んで偉そうにしているが、背丈は小さくて座ると余計に小さい。まるで椅子に抱きかかえられてるような姿に微笑ましさを覚えつつもコウタは彼の口から出た新たなワードについて聞いた。
「secretとは?」
「の前に、何でお前裸なんだ。恥ずかしくないのか」
「え?」
見当違いすぎる返答と、その事実に何故か顔が熱くなった。先程までの炎の熱さとは違う、でも逃げ出したくなるほどの熱。さっきまでうつ伏せのままで話を聞いていたのは正解だったのかも知れない。いつからなどと思い返す必要すらない、炎に包まれていたあの時からに決まってる。
怪訝そうな顔を浮かべて自分の着ていた真っ黒な上着を投げよこしたライム。いや、隠したいのは下なんだって。と、思いながら腕を通すといつの間にか全身を黒い服に包み込まれていた。
堅苦しそうな純白のシャツと少し厚めの真っ黒なジャケット。ズボンはジャケットと同じ生地で、パンツはどんなか知らんけどはいてる感覚はある。ただ驚いたのは見た目に反してめちゃくちゃ動きやすいことと……。
「今のも魔法よ。でもコレには称賛の言葉をかけちゃダメ。ライムちゃん怒っちゃうから」
いつの間にか真横に移動していたアニーさんが耳元で囁く。どうして、と聞き返したかったが慌てて言葉を飲み込んだ。ライムの表情を見て察してしまった。どうやら今の魔法については話題にすることすら許されないみたいだ。
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