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「そろそろもう一人の仲間が来るから、揃ったら私達が何であの村に行って君に会えたのか話すよ」
カウンターの前に置かれたイスに座ったセナさん。もう起きても大丈夫みたいよ。との言葉通り、俺の身体は普段通りに戻っていた。
「すげー魔法みたいだ」
「ふふっ、これ魔法よ。秘術とも呼ばれてるっけ……もしかして初めて見るのかしら?」
不思議そうに首を傾げたセナさんはグローブを突き出して、拳を握ったり開いたりした。そのグローブからはキラキラと霧雨が降り注いでいる。
触れるとひんやり冷たい霧雨は俺の身体の傷付いたところを包んで癒やしてくれた。
「ちょっとー、アタシが疲れるんだから多用しないの」
アナさんがムスッとわざとらしく不機嫌そうな顔で言った後に、ニッコリと笑った。それにつられてか、セナさんも笑顔ではーいと返事をした。
その時、カランコロンと上部に取り付けられたベルをおしのけて開いた店の扉。入ってきたのは整った顔立ちの背の低い色白の少年。やや鋭い眼差しで俺を見た後にセナさんへと視線を移動させると真一文字に結ばれた口が小さく開いた。
「ただいま。セナ、おれは任務達成した」
あえて、おれはを強調して発言した彼はきっとこの店内の様子だけでセナさんが何をしてきたのかさとったのだろう。セナさんも苦笑いすると、俺に向かって言葉を選ぶようにしてゆっくりと話し始めた。
「……あの村にはとある信仰があったの。あの村っていうのは、君が立っていたあのユシヤという燃えていた村のことね」
曰く、炎信仰。炎は全てのはじまりであり全てのおわりである。その言葉を礎に、その村は創造と破壊を繰り返す。神に選ばれた村長はその身に神の印を刻まれて、荒廃した地に村を1から築く。そして、ある程度村が発展したところで村長を中心に終わりの炎が広がってまた新たな村長と共に村が1から始まる。
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