第14話 月
月影は魔性の正体をあらわにするがため、道にのびた私の影に頭はない。見るものが見れば影を見て、それから私の顔をまじまじと見て、聡いものであれば何事かを悟ってしまうであろうから、私は頭のうえに首を載せた。水分のない長髪が、私の髪であるかのように両側から垂れ下がる。これで影のうえでは一人分だ。月の目もごまかせるに違いない。首はどうだろう、首も首である前はこの高さから世界を見ていたのだろうから、懐かしさのひとつくらいは感じているのではないか。文句を言われないのをいいことに、欄干から欄干に飛び乗る。月はしばらく飽きずについてきていたが、欄干が途切れ、川が海になるころには去っていった。
肩が凝ってきたので首をおろす。と、河口に引っかかっていたものが、ゴミではなくクラゲであることに気がつく。よもや告げ口はするまいが、念のためにと何でもない顔をして私も立ち去る。
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