第6話 眠り


 首はよく眠る。おそらくは普通の人間と同じくらいに。これでも生きているのだ。だから私は首が眠るとき、私自身も眠れるような場所であれば、首を胸に抱き、外套をかぶって眠ったふりをする。私は眠ることができないのだ。首とともにあるこの状況そのものが私の夢だから、眠る必要がないともいえる。幸いなことに、私はなにかのふりをするのは得意だ。これは私の夢で、私は首の夢を見ている。首もまた眠りながら夢を見ているのだろう。夢の中で自分が夢を見ていると気づくのは難しい。だから案外、首は首であるときのほうが夢で、眠っているときの自分のほうをこそ現実と認識しているのかもしれない。首は生きているもののように寝息を立てている。私の代わりに首が眠ってくれているのだ、と私は思う。地の底か、あるいは天井から遠くオペラの音色が鳴っているが、私は聞こえなかったふりをする。

 首は変わらず眠り続けている。あと一時間待ってもこのままなら、蹴りつけてキックして起こしてやろう、とも私は思う。


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