第9話 フィリスの力
《9話》
【ナハス裁判所2階】
──俺はフィリスと《契約》をした。
仮にフィリスが極刑になっても生きていけるように…。正直な話、まだ自分がフィリスを助けられるのか…熾天使の力が俺に宿っているかどうかについても多少どころかかなり不安ではある…。
「ところで、少し聞きたいんだが大丈夫か?」
「ん?どうしたの?ディガル君」
「さっきフィーゴからは、この裁判所の法廷内では能力は基本的に使えないって聞いたんだけど…その契約は出来るのか?」
「あー…使えないのは本番の法廷内だけだからね、法廷に入る前なら問題無いよ?あ、でも裁判所内では相手を攻撃するような魔法や能力は使えないね。だから、もし戦闘になるならディガル君は裁判所の控室に居るように言われてたでしょ?」
「なるほど…確かにそう言われていた。ところでフィリスはあの光の鎖で縛り上げる他にどんな能力が使えるんだ?」
「そうだねー、時間がないから後で説明しっかりとするけど…こう見えて私幼い頃から兄に鍛え上げられてるし…そもそも、熾天使の加護が強いから天界では大抵の事出来るよ?」
「流石に万能って訳ではないけど…まだまだ自分の力を模索してる段階かな〜。私は自分の力の可能性を常に追究してるんだよね…過去の失敗から同じ
ま、ディガル君が大怪我したら完全回復したげるから頼ってくれて構わないからね?」
「リザレクションが使えておまけに前線でも戦えるのか…」
(ゲームだったらインフレの象徴だなこりゃ…自己完結してて他者のサポートや回復もしてしまうぶっ壊れって言われるヤツだ…)
「フフーン…まぁね?私の凄さに気づいちゃった?」
フィリスは、少し猫のようなドヤ顔をして見せてくる。
うーん…普通なら世界に優遇され過ぎだろと文句の一つも言いたくなるが…こんなにも可愛いとこうも怒りが湧かないものだな……。
「最初出会った時からなんとなくオーラで分かってたよ。とにかく…時間もないし、俺に力を預けられるのか試してみて欲しい」
「うわ…適当にあしらうなんて悲しいなー?私これまで結構頑張って来たのになー?(ディガル君の為に…)ま、いいけどさ~…じゃあ、おでこ出して?」
なんだろうこのわざとらしく一気に知能が落ちたみたいに拗ねた感じは……可愛い…!
「あぁ、分かってる…後でちゃんと褒めるからさ…。ん?おでこ?何するんだ?」
俺は言われた通りに髪を掻きあげて額をフィリスに見せる。
「ホントはさ、力を移すときにはもっと手順とか方法はあるんだけど……今はあくまで私の力の受け皿になってもらうってだけだから……。」
そう言いながらフィリスは俺の額に手を当ててくる。何か呪文のようなものを小声で呟き始め、その最後に
"この者に熾天使の加護の翼を与え賜う"
という声が聞こえたような感じがする。その瞬間、額に魔法陣が浮かび上がり、俺の中に強大な力が一気に流れ込んでくる。
──これがフィリスの熾天使としての加護と存在の力。悪魔になってから生命力が溢れる感覚というか…絶好調を維持している感覚みたいなモノを感じたが……
ハッキリ言ってそんな比じゃない…身体の奥底からエネルギーが湧き上がり、俺の中の力の限界をオーバーフローしている感じがする。
更にその溢れた分が上乗せされて…限界値をどんどん更新し続けている感覚だ……!
というより…フィリスの力が俺の身体の中に…ってなんかエロくね?いや、分かってる。そんな事で興奮すんのは正直終わってる。
だけど、実際これ間接キスみたいなものじゃないか?この世界に来て一目惚れした相手と間接キスもどきか…生きてて良かった。いや違う違う、そんな状況じゃないだろ今は。
俺が生きてて良かったみたいな恍惚とした表情をしていたからだろう。フィリスの表情が一瞬「え?何…?」みたいな顔した気がする。
「ディガル君…今私の熾天使の加護もらった瞬間になんかすごく幸せそうな顔してたね?なんかエッチな事考えてない?すでに天界だけど天に召される位の雰囲気纏ってるよ?」
とクスクス笑うフィリス。
(いや、フィリスのせいだろ!自分の容姿を理解してないのだろうか……?)
「ちょっ!違う違う、ただフィリスの力は凄いなぁって感じただけで…」
「アハハ、そういう事にしておいてあげる。とにかく、私の熾天使の力の一部はディガル君に移ったから。使おうと思う時には私の姿を想像してくれたらきっと反応してくれるはずだから…」
そう言いながら、フィリスは身だしなみ用の手鏡を俺の方を向けて、確認してみなよっと声を掛けてくる。
「薄っすらだけどフィリスと同じオーラを纏ってる感じがするし、目の色が片方だけフィリスと同じ青色だな…」
目の色やオーラだけではなく、いつもなら俺の翼の色が右は黒と左が白だが、明らかに右の黒色の翼の色がグレーがかっている。逆に白の翼にはフィリスのように艶が出ているように感じる。
「うん、しっかり成功したね。流石私が出来ると見込んで言っただけはあるよ。」
「だから最初、出来るかできないかはそんなに不安ではないって言ってたんだな?」
「まぁ、私もディガル君と同じ目(オーラを見れる目)持ってるからね。普通に悪魔相手にだと反発されるからこうも上手くはいかないんだけど、ディガル君みたいに両方の要素を持ち合わせてると反発される可能性が低いから。」
と言いながらニッコリと笑いながら、じゃ…もしもの時は頼んだぞ~?私の"救世主"っと言って下の階へと先に降りていくフィリス。
───救世主…か。
この授かった力を使わず何事もなくフィリスが無罪になれば良いんだけど……。
俺もフィリスに続いて階段を降り始める。
《9話完》
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