第22話 犬

 映像の中の原罪竜は神を皆食べると、犬の様な生き物に変化して俺らしき人物に近寄って腹を見せて寝っ転がっていた。


 そしてキューン、キューンと言う声を出して服従していた。


 それを困惑した目で見ている俺らしき人が腹をなでると、神様への扉が現れてクリアになった。


 …………何だこれ? 俺の時とは大違いじゃ無いか!


 ”原罪竜が犬になって媚びてて草はえるw”

 ”誰が原罪竜なんて引っ張り出したんだ?”

 ”これって今回、原罪竜の相手でもこんなに内容違うと願い事を叶えるエネルギーの幅が凄く大きそう”

 ”今回の場合、今までで一番苦労してるんだから願いを叶えるエネルギーが足りなさそう”


「その顔は俺の時とは大違いじゃ無いかと言う所かな? 考えてみたまえ、1個の魂が原罪竜といえどもほぼ無限にも及ぶ時の中で負け続け、休息も無く、戦場にばかりかり出される。

 しかも最後は決まって殺される。これでは、魂がすり減って生存本能か自棄やけか分からないがああいう行動に至ったのも無理は無いかと思わないか?」


「そりゃ、理性や理屈は分かるが感情が納得しない! 何だあれ! 誰がこの企画を思い付いたんだ!」


「誰がと言うと食べられていた神達の本体達がだろうが、分霊を食べられて弱体化しているからなぁ。後は君のファンのより迫力のある君の戦いが視たいと行った欲望で神界のクラウドファンディングにエネルギーを入金した者達だろうな」


 ”ギクッ!”

 ”ギクッ! ギクッ!”


「何だそりゃ。その所為であんなに苦労する羽目になったのか」


「苦労した分、儲けは大きいよ。原罪竜との戦いで苦労した分だけ報酬も大きくなるからね。最後の服従なんて報酬はFランクと同等なんじゃ無いかな? いや、魂が時間逆行させる仕掛けがあったからCランクかな? と言う事は今回のも仕掛けがあるから思っていた報酬よりも高くなるな。下手したらSSSランクの上のEXランクよりも高くなるんじゃ無いか?」


「そ、そうなんだ。苦労した分報われるなら良いんだ」


「それで言えば今回は渡されているエネルギーが足らないので、やり直しを思い付いて実行した者達の本体に誓詞を交わした。

 なのでその者達から願い事を叶えるエネルギーを今から渡すその瞬間に本体から強制徴収される様になっている」


「それならリボ払いの様な支払い方法でも良いけど? 利息が高くなると言っておいて。具体的には今から書くけど、誓詞に使う紙とペン持ってない?」


「それならこれで如何だろう?」


 プリンター用紙の様なA4の紙とボールペンが渡された。大丈夫かと聞いたら紙やペンが重要なのでは無く、そこに誓詞と認識して書いて署名する事で強制力が発生するらしい。

 

 そこで書いたのは月の返済が軽い額なら9割9分9厘利息で1厘本体の返済に回される。返済額が高くても7割利息で残り3割が本体の返済に回されるような事を長い言い回しで分かり辛く書いた紙を人数分用意して、これに契約するかどうか提案して欲しいと言った。


 繰り上げ返済は認めるが手数料が掛かる事も書き、手数料は返済までに得られる利息の80%にした。


 ただし、返答のサインも含めて5分間で決めて欲しいとも言った。決められなかった場合は従来の方法に従う事にしたと見なすと言って見せる様に言った。


 その結果、大多数が契約に応じた。応じなかった賢い神様も返済で首は回らない状態になるだろう。


「それで願い事は如何するね?」


「へ~、きちんと願い事は叶えるんだ。こんな事に手を貸しているから誤魔化すかと思った」


「願いを叶える神は中立から選ばれる。だから、仕事はちゃんとするとも」


「それじゃ、願いは保留で。願い事が決まったら神棚に祈って叶えて貰うよ」


「あい分かった。だが、そろそろ何か願い事をして欲しい頃合いだ。何と言っても銀河間皇国を願った時の10倍の大きさに膨れ上がっているからな。今回で13倍だ」


「そうは言われても、願い事のエネルギーを消費してまで叶えて貰う願い事が無いんだよ」


「それでもこのままなら貯まっていく一方じゃ無いか」


「まぁ、何か無いか考えておくよ。あったら神棚で願う事にするから!」


「はぁ~、まぁ、こちらも無理強いはできないから言葉だけにしておくしか出来ないが頼むぞ、本当に」


「善処します!」


「絶対善処しない回答だ、それ」


 ”善処はするが結果に結びつかないだけかも知れないぞ?”

 ”あるあるだな”

 ”それにしても貯めた物だ”

 ”三大宗教の主神クラスじゃないか?”

 ”維持費の事を考えたら、越えるかもな”

 ”と言うか、いつ神になってもおかしくない状態じゃ無いか?”

 ”それはそう”

 ”でもまだ人間だからな!”

 ”それもそう”

 ”原罪竜を倒せる時点で普通の神を越えているな”

 ”全くもってその通り”

 ”さっきから相づち打ってる奴は何で相づち打ってるの?”

 ”相づち打つしかない話だったから”

 ”…………そうか”


「まぁ、とにかく保留というのは分かった。帰還ゲートを出すけど帰るかい?」


「そうしようと思う」


 そう言うと、神様は帰還ゲートを出してくれた。


 俺は帰還ゲートに乗り込んでダンジョンから脱出した。



―――――――――――――――――――――――――――――


 やっと原罪竜が終わりました。

 最後の命乞いするまでに何処まで死んだんでしょうかね? 原罪竜は。

 パトラッシュ……疲れたよ。天国行けるかなぁ?<地獄行き

 

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