第9話 北海道ダンジョン②

 順調に階層を攻略しているとコメントが目に入る。


 ”敵を一撃って強すぎて画面映えしないよな”

 ”確かに退屈かも知れません”


「それでは、次は素手に魔力を纏って肉体で倒してみましょうか?」


 ”お! 言ったな。訂正は効かないぞ”

 ”それなら見応えがあるかも知れない!”


「でも、手だけじゃ無くて体や靴なども使いますかね」


 ”まぁ、それは危険だから良いけれど”

 ”了解です”


 そうして迎えた初モンスターがエアーマロンだった。


 イガ栗の大きいのが浮いているモンスターと思ってくれれば良い。


 俺は靴を片っぽ脱いでそれを手に取り魔力を纏うとエアーマロンを上から下にひっぱたいた。


 それだけでエアーマロンは消えて栗がドロップして自動で収納指輪に収納される。


「いやー、生身だと棘が怖かったですね! 危険なモンスターでした」


 ”いや……お前、Gじゃないんだから靴でひっぱたくなよ”

 ”……いちげきであのよにいきました”

 ”おーい、もう1人大丈夫か? 全部ひらがなになってるぞ”

 ”…………”


「どうやら言葉も無い程に満足してくれたようですね! 華麗な靴捌きを見てくれましたか?」


 ”満足じゃ無いわ! 引いてるんだよ!”

 ”あは……は。靴ってモンスター引っぱたいたら殺せるんだね……”


 俺は靴を履き直してどうしようかと考えていると、向こうから又、モンスターが来た。


 今度はサラマンダーだ。


「それじゃ肉体で攻撃してあのサラマンダーを退治しますね」


 そう言うと、サラマンダーに迫って魔力を纏った拳で頭を殴った。


 一発でお亡くなりになりに。魔石や精霊石等のドロップ品が残ったが自動回収された。

 

「えー、一発で倒せてしまうので余り意味は無かったですね」


 ”お前が強いのは良く分かった”

 ”強すぎて訳が分からない”

 ”そろそろ仕事忙しいから俺は落ちるわ”

 ”それじゃ、私も落ちますね”


 そう言って2人は落ちて同接の視聴者は0人になった。

 俺は落ち込んだが、気を取り直して攻略を進めた。

 ちなみにチャンネルの登録者数は増えも減らずもならずに変わらなかった。


 「丁寧語で話しても視聴者増えないじゃ無いか! こんな事なら地で話せば良かった」


 神様には丁寧語を基本的に使う様にしているが、人間にはフランクにして地を出しているのに無理するからこうなるのだと気が付かない誠だった。


 大体、まだ中層部なので深層でも一撃で倒せる誠が手こずるはずが無い区画だと言う事を忘れていた誠だった。


 そうして攻略を黙々としていき、一人きりなので攻略が捗った。


 結局、深部に至までに誰も来なかった。


 深部になったので人界の配信を切る。


 ◇◆◇◆

 

 人界の配信を切ると神様の同接視聴者数が分かる。


 今回は280万柱だ。驚きも繰り返せば慣れてくる俺がいる。


「神様方、こんにちは? それともこんばんは? 柳田誠やなぎだまことです」


 ”おう! 数日ぶり!”

 ”人界での人気の無さと普段と違って人界で丁寧語喋る姿にワラタw”


「そうなんですよ! せっかくの新規視聴者獲得かと思ったのに!」


 ”人間に一発で敵を殺す事を見せてたら退屈だろう? 俺達ならどういった工夫をしたかや何処に拳を入れたかなんて分かるがな”

 ”そうそう、そういう所がまた見たくなっちゃうんだよな”

 ”神受けすると人間には受けなくなるよ”

 ”半比例する様に何故か人界での人気者は神界だと受けなくて人界で受けない奴は神界で受けるよね。まぁ、実力のある奴だけだけど”

 ”比較して安全なのは人間に人気のある奴で、俺達神に人気のある奴は危険だけど高配当が貰える可能性があると言う。俗に言う低リスク低リターンか高リスク高リターンかの違いだな”

 ”低リスク低リターンを望んでいても高リスク高リターンになってる奴がここに居るが?”

 ”それは、諦めろというしかないな!”

 ”大体からして混沌期のダンジョンに自分から入ってくるって神受け必然案件だよな”

 ”それはそう”


「仕方ないじゃ無いですか、通常よりも100倍も違うと言われれば混沌期でも攻略可能なら混沌期で入りますって」


 ”言わん事は分かるけどなぁ”

 ”自ら泥沼に入っていってるよな”

 

 神様方と話をしながら寄って来る深層のモンスターを刀の一突きで仕留める。

 そしてそのまま何事も無かった様に話し始めようとするが、神様から物言いが入った。


 ”だから、今みたいに俺達と話しながら深層のモンスターを一突きで殺してるのおかしいから!”

 ”流れ作業の様に違和感なかったな”

 ”もう既にこちら側神界の籍に入ってるんじゃ無い?”

 ”ありそうで怖いな”

 ”それどころか、神殺しもしそうだぞ。一撃で”

 ”ありうるな”


「俺はまだ人間ですってば。人間止めた記憶は無いですよ!」


 ”不老不死は?”

 ”少なくても人間は不老不死じゃない”


八百比丘尼やおびくにという前例があるじゃないですか。それに不死者の伝説も世界各地にありますし」


 ”そこで伝説出してるのがもう駄目だね”

 ”真贋確かめたの?”

 ”不死者、大概人間扱いされてないよ?”


「俺が人間だと思ってる内は人間って事で良いじゃ無いですか。そうじゃ無いと願い事も叶えて貰えませんし」


 ”君は人間だ!”

 ”まごう事なき人間だ”

 ”何処からどう見ても人間だな”


 ◇◆◇◆

 

 そうして深層の底に着いたのにまだ階段があった。

 

 降りてみると深海よりも来い何かを感じる。今までが深層ならここは最深層だ。


 良い時間になったので最深層を探索する前に異次元扉で扉の前に結界が作られて扉を開けて中に入り館に行き、古竜の肉を1kgステーキで食べて歯や風呂をちゃんとすませて近くの部屋で寝た。


 ちなみに配信はずっと扉が移っているだけになったのでだんちゅ~ぶが停止中として止めた。


―――――――――――――――――――――――――――――


 視聴者は0人になるとショックを受けますよね。チャットでもそうですもん。

 でも、誰もいないから逆に仕事が捗る時ってありませんか?


それにしても神様の手のひら返しの早さはさすが神だけあって早いですね!

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