第4話

少し距離はあるが一駅の区間を歩く事にする。

仮谷は、少し暑さが落ち着いたこの季節が一番好きであった。淀川の警察署から自宅までほ、ゆっくり歩いて40分程度。

少し中年の部類に足を踏み込みつつある仮谷にとって、運動不足解消に丁度良い感じの距離である。


途中に大きな公園があり、自動販売機で買った缶ビールを口にする。糖質ゼロのビールではあったが、なかなか旨かった。最近、体調に配慮するようになり、食べ物や飲み物にも気をつけるようになってきていた。

公園の中には、いちゃつくカップルが数組いた。彼らは逆に一人でベンチに座り、ビールを飲む男を見て、不審そうに視線を向ける。なんだかその痛みに耐えきれなくなり仮谷は、なんだか居心地が悪くなり一気にビールを飲むと軽く凹ますと近くのゴミ箱に投げ入れてから、公園を後にした。


少し熱くなった彼は上着を脱ぐと肩に羽織った。ちなみに、仮谷は通勤に鞄を使用しない主義であった。そのせいもありポケットは、財布や鍵、手帳などで日常的に膨らんでいる状態である。そのせいもあって、重みでズレるスラックスを引きずり上げるのが彼の癖のようなっている。


「イチャイチャしやがって……」少しやっかみもあったようである。


しばらくすると三国駅に到着した。夜食を仕入れる為に、駅前の食品スーパーに立ち寄る事にする。


「カレー……かな」なんだか、カレーが食べたい気分であった。しかし、この時間から米を焚いて、ルーからカレーを作る時間は流石に無かった。仕方なくご飯とレトルトのカレーを買って帰る事にする。


「あれっ?」パックのご飯を籠に入れて、レトルトカレーのコーナーに向かうと見覚えのある服を着た女性が、棚のカレーを物色している。隣の部屋に住む小林という女性であった。彼女の苗字は玄関の表札を見て覚えていた。


「あっ……、刑事さん……」彼女は仮谷の気配に気がつくと立ち上がって、軽く会釈した。


「こんばんわ……、晩飯ですか?」仮谷は、レトルトカレーを指差した。


「駄目……ですか?」なんだか、少しムッとした顔を見せて、手に取っていたカレーを自分のカートに入れた。


「いえ、そういう訳では……」


「刑事さんは、よっぽど美味しい物をお食べになるのでしょうね」彼女が仮谷の籠に視線を移した。彼は、彼女の目を見て籠をゆっくり後ろに隠した。


「いや、これは……、というか、その刑事さんって言うのは止めてもらえませんでしか……」仮谷は口元に手を添えると、少し小さな声で伝える。


「えっ?」凉風は、不思議そうな顔をする。仮谷が周りを見るように目配せをした。近くにいる客が、不審な目を向けている。刑事という言葉に反応したようだ。「じゃあ……、あなたのお名前は?」凉風は掌を向ける。


「仮谷……です。貴女は?」本当は、既に彼女の名前は知っているのだが、念のため聞いておく。


「小林凉風です。あっ、遅くなりましたが、今朝はありがとうございました。け、いや……仮谷さん」凉風はもう一度会釈してみせた。


「いいえ、どういたしまして……」仮谷は、なぜか少し照れ臭そうに頭を搔いた。


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