第1話

ポータルを通ってやってきた場所は草原だった。見渡す限り一面が緑に染まっている。ウサギに似た小動物や狼に似たおおきめの動物もいた。ただ以前どこかで見たことあるような動物は一匹もいない。ただ一つ言えることは人がいる感じが全くと言っていいほどないこと。


「いろんな生き物がいるみたいだし観察してみますかね」



いろいろ移動しながら探した結果、15種類くらいいた。特に馬みたいなのが猫に似た何かを食べているところにはとても驚いた。一言で言えば、食物連鎖の上位層と下位層の動物の見た目が入れ替わっている感じ。


「さすがに馬が猫を食べてるのはみたくないなぁ。ライオンが種を一心不乱に食べているのは面白いけど」


ライオンが食べきれず残した種だろうがちょうど目についたのでもらっていった。





「これは初めて見るタイプ...というよりはハムスターか。」


そこから1時間ほど観察と移動を繰り返したところで新種が出てきた。真っ白なハムスターを見つけた。敵対心をも警戒心も感じられない。


パキッ


あっ。固めの茎を踏んでおってしまったらしい。


「キキッ」


 ハムスターはこちらの存在に気付いた瞬間に距離をとった。


「ギーギー」                  


かなり痩せていながらも攻撃的に威嚇するのをみて違和感を感じた。この世界では上位層に位置するはずなのに他と比べるとかなり痩せていたこと。馬や牛などは、痩せている個体が一匹すらいなかったから。もう一つは穀物の種にすごい勢いで向かっていったこと。偶然にも探索途中で拾った種をハムスターに向かって投げたら警戒していなかったかのように食らいついた。食物連鎖の上位層であれば、そもそも植物をたべることはないはず。


「こいつはこの世界に迷い込んできただけかもしれないな」


近くに自生しているかぼちゃみたいなのから種を取り出して手に乗せて近づけると逃げようとはしたが、空腹には勝てず食べ始めた。手に乗せた種を全部食べ切ったあと肩に乗ってきた。


「かわいいやつだな」


『そんな君に提案だが、私と契約しないか?』


こいつ普通に会話の成立する知的生命体だったのかよ。

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