刹那のうちに

ガルグイオ

プロローグ

 僕の名前は御影幸人みかげゆきと。高校2年生。帰宅部。人より少ししゃべれる言語が多いだけで至って普通である。ただ一つ大きく違うことは、自分の死期がなんとなくわかるということだけ。これは御影家の人であれば例外なく受け継がれていく不思議な力。ドーナツが久しぶりにたべたいなぁと感じるのと同じくらいの感覚で近いうちに死ぬのかなぁと思うくらいである。そんなことを最近は感じながら高校へと通っている。



 僕はどちらかといえば陰キャである。ある程度仲のいい人はいるが一人でいることのほうが圧倒的に多い。

 僕の通う高校は全国的にも珍しい65分授業を採用している。午前3時間、午後2時間の1日5時間授業となっている。とはいえ1年以上たてば長いと感じることもなく、45分や50分授業が短く感じるくらいにはなる。でも今日は避難訓練があり50分授業である。正直かなり短い。


 4時間目の途中に訓練が始まった。いつもは地震や火災の避難訓練なのに今回は珍しく不審者訓練のようだ。何やら教室に入ってきて


「動くな」


 と。ただ冗談だと思う生徒が多くしゃべっている人もいる。


「黙れ」


 と。そしてを取り出し、教師の頭を容赦なく撃ち抜いた。


「うごくんじゃねぇ、動いたりしゃべったりしたらこいつのようになるぞ」


 そう脅してきた。どうやら本物らしい。泣いたり、腰を抜かしたやつもいる。相当インパクトが強かったらしい。その後もヒステリックに泣き叫んだり吐いた奴は奴は拳銃で撃たれていた。


「死にたくないならうるさくするんじゃねぇ」


 落ち着くまでの間に13人殺されていた。このクラスは40人なので3人に1人は殺されている。

 僕は何も感じないのかって?残念ながら他人に共感したり、同情したりすることはないのでこいつ死んだのかぁという以外に感情がわくことはないのだ。考えてみてほしい。他人がどれだけ辛そうにしていても、自分は辛そうだなぁとか大変そうだなぁというだけで人の気持ちを完全に理解することは不可能だから。一度だけ目の前で車にひかれて死ぬ瞬間を目撃しているのもあり余計に動じなくなっていた。



 それから大きく状況が動いたのは20分くらいたった後だった。突然教室が目を開けることができないくらいの眩しい光に照らされ、意識を失った。


(これが自分の最期か........あれ最後までよみたかったなぁ...)








「Kas te olete esimene?

 Siiski on ebatavaline, et üleminek ja reinkarnatsioon toimuvad samal ajal.」

(あなたが最初ですか。

 それにしても、転移と転生が同時に起こるとは珍しいですね。)



 これはエストニア語か。転移や転生という単語が聞こえてきたのでおそらく異世界だろう。なぜ地球の言語が話されているのかがとても不思議である。



『ここに来る少し前に殺人事件が発生したからですね。殺された13人は転生者に残りの29人は転移者ですね。ちなみ犯人は真っ黒の服を着た男です。』


『この男は弱いし不要なので死んでもらいます。初めてこちらの世界に来た人と会話ができてうれしいです。あなたに与えられる能力は刹那と代償みたいです。気分がいいので強化しておきます。』


『ありがとうございます。いくつか質問してもいいですか』


『いいですよ』


『1つ目は魔法についてですが、使うのに能力の有無や適性はありますか。』


『魔法は誰でも使えますが例外なく一人で使えるのは4つまでです。最初に使った4種類の魔法系統だけが使えます。種類はそれなり多いです。』


『2つ目は、なぜここに呼ばれたのでしょうか。』


『邪神が異界から悪魔という外来種をつれてきたからその対抗措置として勇者・英雄召喚というわけです。いえばあなた方も外来種です。』


『最後にこの世界の国際情勢と常識を』


『魔族国家ディクターと人間国家ハーバンドのくだらない争いですね。人間国家も魔族国家もそれぞれ6国ずつと中立国家が6国でどの派閥も勢力が拮抗しています。常識........しいて言えばあなたのいた国より圧倒的に多種多様で治安が悪いことと強い身分制度のある世界ですね。』


『ではありがとうございます。能力は使ってもいいですか?』


 神と名乗る者が許可を出してくれたので使っていきたいと思う。


「僕に関する記憶の消去、代償、転移前までの文明など記憶

ポータルを作る能力、代償、地球に戻れないこと」


ポータルを作った瞬間何かを忘れたような気がする。


『ではほかの人より先に行かせてもらいます』



「待って!いかないで幸人」


「.....大丈夫だよ日向佳ひなか。いつかは会えるから。」




 どうやら記憶を消せなかった人の分は自分でも覚えているようだ。


「じゃあね。また会う時まで」


「待って────」


 そういってポータルを通って行った。

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